パワーエレクトロニクスと無線充電のスタートアップEggtronicが10.7億円のシリーズA投資を獲得
AI.
イタリアで創設されたスタートアップのEggtronic(エッグトロニック)は、パワーエレクトロニクス、ワイヤレス充電、Data-on-Power(電力線データ通信)の技術と製品を開発しているが、このほどシリーズAラウンドをおよそ1000万ドル(約10億7000万円)でクローズした。
この企業を支援しているのは、カーナビゲーション企業のTomTom(トムトム)の創設者たちによる投資ファンドRinkelberg Capital(リンケルバーグ・キャピタル)と、ミラノの匿名の投資銀行だ。これによりEggtronicが2012年から調達した資金の総額は1700万ドル(約18億2000万円)となった。
Eggtronicは今回の資金を使って、同社の研究所の中に新しく集積回路部門を立ち上げ、より効率的な電力伝送を目指すロードマップに沿った開発を進めるという。ゆくゆくは同社のCapacitive(容量性)ワイヤレス充電技術を新たな業界標準として一般化したいと考えている。
バルサミコ酢、オペラの伝統、フェラーリやランボルギーニといったスポーツカーが有名なイタリアの都市モデナ出身のCEOであるIgor Spinella(イゴール・スピネラ)氏が創設したEggtronicは、今ではアメリカとイタリアと中国に製造施設を構え、洒落たノートパソコン用の充電器や、大理石のようなワイヤレス充電器で知られている。
だが同社は、他のブランドに向けたさまざまなパワーエレクトロニクス製品の生産も行っている。さらに、他のメーカーが製品に組み込んで使えるICなどのB2B事業は、長期的な「拡張性のある」未来として位置づけられている。
スピネラ氏が私に話したところによると、Eggtronicの消費者向け製品とホワイトラベル製品は、Eggtronicにはより良いワイヤレス充電の未来を実現させる能力があり、その研究開発に再投資すれば利益が得られることを直接的に市場に知らしめるものだという。
「私たちはカリフォルニアにいたわけではありません。イタリアの投資家にもほとんど知られることなく、大きな資本を必要とする分野で頑張っていました。そこで設計と製造ができる企業として認めてもらい、最高に革新的な技術を使った驚きのデモ製品の製作などを可能にする研究開発と、世界規模への拡大のための投資が得られる仕組みを作りました」とスピネラ氏は説明してくれた。
そのデモ製品には、2015年のスマートフォンの充電ができる容量性ワイヤレス充電パッド、2017年のテレビ、2020年の電力線データ通信でネットワーク接続と充電ができるノートパソコン2機種などがある。
「これらの研究開発デモは、私たち独自のアイデア、つまり電力とデータの無線伝送技術の実証にとって、極めて重要な節目となりました」とスピネラ氏。そこには「文字通りあらゆるデバイスを適当に机の上に置けば、そのすべてに充電とネットワーク接続ができる、完全な位置的自由」も含まれる。
加えて、高電圧の使用事例におけるデモも行っている。電力線データ通信では、無線でありながらUSB3.0の有線接続と同等の速度を実現したと同社は主張している。
「この技術には、すでに法人顧客がついています。次のステップはICと、そのICをベースにした最初の小売用商品の開発です。その上で、私たちはトップ企業への売り込みができるようになります」とスピネラ氏は付け加えた。
それまでの間、同社は、それと同じ容量性技術の一部を、Eggtronicのノートパソコン用充電器や電源アダプターといった既存の製品に使われている電力変換に応用しようとしている。
「私たちはこの分野で、いくつかの特許を申請しました。まずは、トランスを廃して効率を高めサイズを小さくできる容量性変換器です」とスピネラ氏。『今では、もっとも一般的な利用領域である数十ワットからキロワット単位までをほぼカバーできる、自社発明のアーキテクチャーがいくつもあります。さらに、独自の共鳴アーキテクチャー(容量性、誘導性、ハイブリッド)、数種類の独自の制御アルゴリズム、独自の力率補正回路、コンポーネントのサイズを縮小する独自方式、直列になった段を減らす方法などがあります」。
一方でスピネラ氏は、一般消費者家電の経験が豊富なMark Gretton(マーク・グレトン)氏の助言を受けている。グレトン氏は元TomTomのCTOで、Psion(サイオン)でモバイルコンピューティングの先駆的開発に尽力した人物だ。Eggtronicは、Rinkelberg Capitalを通して彼と知り合った。投資とアドバイザーとしての参加が決まったのはその後だ。
「参加を決めたのは、第一にイゴールのことが好きになり、尊敬できたからですが、私が出会う幾多の技術系企業とは異なり、Eggtronicの提案が爽快なまでにシンプルだったこともあります」とグレトン氏は私に話した。「私たちは、すべての人の生活に欠かせないものを、テクノロジーを応用して改善していきます。自分でも気づいていない問題には、新しい行動様式も、複雑なビジネスモデルも、ソリューションもありません。すべての人のための、より優れたパワーエレクトロニクスを開発するだけです」。
画像クレジット:Eggtronic
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(翻訳:金井哲夫)
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