建物のエネルギー消費をモデル化し持続可能性をもたらすCove.toolが6億円調達
AI.
Patrick Chopson(パトリック・チョプソン)氏とSandeep Ahuja(サンディープ・アフージャ)氏は、建物のデザインを持続可能性とコストの観点から最適化するソフトウェアを開発するcove.toolをアトランタで創業した。彼ら自身が建築家としてのキャリアの中で直面した問題を解決するためだ。
ジョージア工科大学卒業生の二人は、チョプソン氏の兄弟であるDaniel Chopson(ダニエル・チョプソン)氏とともに、EYP、P25、Skanska、JLLを始めとする世界22カ国の多数の建築家、技術者、そして開発者によって使われている一連のソフトウェアを開発してきた。同社のソフトウェアは、カリフォルニア工科大学、イリノイ大学、UNCシャーロットなどの大学や、彼らの母校であるジョージア工科大学でも教えられている。
今回同社は、ロサンゼルスに本拠を置く投資会社Mucker Capitalが主導したシリーズAラウンドで570万ドル(約6億円)の資金を調達した。ラウンドには、以前の投資家であるUrban.us、Knoll Ventures、アトランタのTechSquare Labsなども参加している。
同社が最初に生み出した製品は、建物のエネルギー消費をモデル化し、エネルギー効率を改善する方法についての洞察を提供するソフトウェアだ。cove.toolによれば、この製品は、以前なら外部コンサルタントが関与し約150時間かかっていた手作業を30分で完了できる作業に変えるという
このソフトウェアは、エネルギー消費、露光、反射、放射、水、新規および既存の建物に対する具体化されたカーボン目標などの要因を考慮することができ、さまざまなオプションを比較する機能を提供して、建築家や開発者がエネルギー目標を達成するために、最も費用効果の高い方法を決定できるようにする。最新のアップデートでは同社は、開発者が新型コロナウイルスのような感染性疾患の潜在的な蔓延を減らすための最も安全なデザインを考慮するのに役立つ、室内占有率計算ツールを追加した。
建物自身と建物の建築作業が気候変動を引き起こす温室効果ガス排出に大きく寄与している。建築建設世界同盟(Global Alliance for Building and Construction)と国際エネルギー機関(International Energy Agency)が発表したデータによれば、温室効果ガス排出は年間炭素排出用の39%を占めている(世界同盟レポート)。そして、世界中で続く都市への継続的な移住は、新しい建物や建設の需要がすぐには減速しないことを意味している。建物への需要が高まる中で、cove.toolのソフトウェアなどの技術を使えば、一般的な建設プロジェクトなら4万本ぶんの木に相当する資源を節約できる可能性があると同社は述べている。
同社の最高経営責任者であるアフージャ氏は、「気候変動を押し止めるという意味で、建物の環境負荷を差し引きゼロにするための行動が無意味にならないようにするには、あと10年ほどの猶予しかありません」と語る。
アフージャ氏によれば、新しい資金を手にしたcove.toolは、グローバルな販売およびマーケティング活動を拡大し、いくつかの新しいプロジェクトを推進する予定だ。創業者の二人は、彼らのソフトウェアはすでにカナダ、イギリス、オーストラリアの建築基準を満たすように設計されていると語る。また同社は、火星環境向けにエネルギー効率の高い構造をデザインできるかどうかを確認する計画も立てている。
「火星のことをやるのは楽しいからです」とアフージャ氏はいう。「そのモデルがどのようなものになるかを知りたいのです」。
このソフトウェアの大きなセールスポイントは、環境の持続可能性が製品にガッチリ組み込まれていることだ。そのため、開発者がコスト削減にしか注意を向けていない場合でも、とにかく二酸化炭素排出量の改善が行われる。
「私たちのプラットフォームを使用する開発者は、持続可能性を気にするかもしれないし、気にしないかもしれませんが、間違いなくコストは節約できます」とアフージャ氏はいう。
製品ロードマップ上の次のステップは、建設管理者や開発者がcove.toolによるデザインを実際の建物に変えるために必要な、エネルギー効率の高い建材を提供できる市場の開設だ。
「誰もがまったく異なる悪いワークフローを採用しています」と、同社の共同創業者で製品開発責任者であるチョプソン氏は述べている。「私たちのソフトウェアは、すべての建物とすべての都市が実際に満たす必要のあるコストとオフセットカーボン目標の観点から、それらをまとめます」。
ここで描かれているロードマップは、建築家から請負業者までのワークフローを簡単にして、関係者全員がより緊密に調整できるようにすることだ。建築市場のそちら側に参入することで、cove.toolは非常に資金の豊富な他社と競合することになるが、それは市場の建築管理と調達に関わる領域が巨大であるためだ。
Procoreのような企業が、建築管理プロセスを簡素化するというお題目を掲げて、10億ドル(約1000億円)規模の企業になっている。
アフージャ氏によれば、cove.toolのマーケットプレイス製品は、2021年半ばに登場する予定である。リストに掲載する予定の数百のベンダーからの1000を超える製品のデータベースを、すでに蓄積しているということだ。
「製品データベースはたくさんありますが、内容を分析できるところはありません」とチョプソン氏は語る。「あるガラスが、他のどのガラスよりも優れていることを分析できるのは私たちだけです… それはあまりにもまとまりがないので、普通ならあるものと別のものを比較することはできません… 重要なのは、対象を分析し、分析結果を建物のコンテキストに反映できるようにすることです」。
最終的には、やはり効率と持続可能性に焦点が当てられるのだとチョプソン氏は語った。そして、急速に温暖化する世界では、他に重要なことはほとんどない。
Mucker Capitalのパートナーであり、cove.tool取締役会のメンバーとなったOmar Hamoui(オマー・ハモウイ)氏が声明の中で述べているように「持続可能なデザインは、建築業界で急速に必要になりつつある」のだ。
カテゴリー:EnviroTech
タグ:Cove.tool、資金調達
画像クレジット:cove.tool
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(翻訳:sako)
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