AIを組み合わせてロボットのピック&プレースをこれまでになく高速化する研究
AI.
ロボットが得意とする仕事に、倉庫などでよく見る退屈な繰り返しの「ピック&プレース」作業があるが、いまはまだ人間のほうがその作業には優れている。カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究者たちは、2つの機械学習モデルを組み合わせることで、ロボットが掴んだものを運ぶ道筋の計算をわずかミリ秒単位に縮めようと考えた。
人はモノを手で拾って、どこか別の場所に置くという動作をほぼ考えることなく行うことができる。それは長い間日常的に行ってきた訓練の賜物という以外に、私たちの感覚と脳がそうした作業によく適応しているためでもある。「このカップを手で持って、高く持ち上げて、横に移動して、ゆっくりテーブルに置いたらどうなるか」と頭で考える人はいない。モノを運ぶ経路は限られており、ほとんどの場合、実に効率的に決められる。
ところがロボットの場合、常識や直感で動くことができない。「当たり前」のソリューションが欠如しているため、モノを拾い上げて運ぶ経路を決めるには、数千とおりの可能性を評価しなければならない。しかもそれに必要な力、衝突の危険性、使用する「手」のタイプによってそれらに与える影響の違いなどの計算も同時に行う必要がある。
どう動くかが決まれば、ロボットは高速に行動できるようになるのだが、その決断には時間がかる。通常は数秒程度で済むもののの、状況によってはずっと長くなる。だがうれしいことに、UCBのロボティクス研究者たちは、それにかかる時間をおよそ99%まで短縮できる方法を編み出した。
そのシステムは、2つの機械学習モデルが交代で働く仕組みになっている。最初のモデルは、大量の移動サンプルを参考にして、ロボットアームの経路の候補を連発する。次に、その大量に生成された候補の中から最良の選択ができるようトレーニングされた2つめの機械学習モデルが、1つを選び出す。その経路は多少大雑把になる傾向があり、モーションプランニング専門のシステムによる洗練が必要になるが、このシステムは採用すべき一般的な経路の形状をあらかじめ用意して「ウォームスタート」されるため、ほんの一瞬の仕上げ作業で済む。
モーションプランニングシステムが単独でこの作業を行えば、10秒から40秒の時間がかかる。だがウォームスタートすることにより、10分の1秒以上かかることは稀となる。
これはあくまで机上の計算であって、実際の倉庫で同じようにいくとは限らない。現実世界では、ロボットは実作業をこなさなければならず、時間的余裕はまったくない。しかし、現実の環境でモーションプランニングにかかる時間が2秒か3秒程度だったとしても、それをゼロに近づけるだけで、積もり積もればかなりの時短になる。
「1秒が重要なのです。現行のシステムでは、1サイクルの半分の時間をモーションプランニングに費やしています。そのためこの方式なら、1時間の尺度で見れば、劇的な高速化の可能性があります」と、研究室の責任者であり論文の筆頭著者であるKen Goldberg(ケン・ゴールドバーグ)氏はいう。環境特性の把握も時間のかかる工程だが、コンピュータービジョンの性能を改善すれば高速化できると彼は話す。
現在のロボットは、ピック&プレース作業の効率において人間の足元にも及ばない。だが、小さな改良を積み重ねることで人間に対抗できるまでになり、ゆくゆくは人間も敵わなくなるだろう。この作業は、人間にとっては危険で骨の折れる仕事だ。それでも、世界中の何百万もの人たちがそれに従事している。伸び続けるオンライン販売業からの需要を満たすためには、それしか方法がないからだ。
この研究の論文は、今週のScience Roboticsに掲載されている。
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カテゴリー:ロボティクス
タグ:カリフォルニア大学バークレー校、機械学習
画像クレジット:UC Berkeley/Adam Lau
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(翻訳:金井哲夫)
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