ロケット打ち上げスタートアップAstraのロケットがカーマンラインを超えて周回軌道へ
AI.
ロケット打ち上げスタートアップAstra(アストラ)は、周回軌道に実際に達したエリート企業の一員となった。これは予想よりも随分速い達成だ。同社のRocket 3.2テストロケット(そう、「ロケット」と呼ばれるロケットなのだ)は、米国時間12月15日にアラスカ州コディアックからの打ち上げで、カーマンラインを超えた。カーマンラインとは地球の大気圏と宇宙空間の境界とされる海抜高度10km(62マイル)地点だ。
今回は、Astraの軌道飛行テストシリーズの第2回目となる。同社は9月にRocket 3.1テスト機を打ち上げている。同社の定義によるとその飛行で大量のデータが得られたため、テストは成功とされているが、ロケットは宇宙に達することも軌道に乗ることもなかった。Astraによれば、Rocket 3.1も3.2も、3回に及ぶ打ち上げ計画の一環であり、3回目の試みが終わるまでには、軌道高度に達する予定という。
Astraは、カリフォルニア州イーストベイでロケットを作っている小型衛星打ち上げスタートアップだ(未訳記事)。同社の工場は、最終的にはランチャーを大量生産できるように設計されている。同社のモデルはSpaceX(スペースX)やRocket Lab(ロケットラボ)のような既存オプションよりも小さな機体を使用しているが、比較的安価に反応性が高く短いターンアラウンドの打ち上げサービスを提供することを目標としている。宇宙行きのリムジンではなく、バスといったところだろうか。同社はVirgin Orbit(バージン・オービット)のような企業とより直接的な競合関係にある。ちなみにVirgin Orbitはまだ打ち上げロケットで宇宙には行っていない。
これはAstraのロケットプログラムにとって非常に大きな勝利でありマイルストーンだ。問題のあった9月の打ち上げ(同社ではオンボードガイダンスシステムの問題と結論付けている)から比較的短い期間で立て直しを実現させたのだから尚更だ。3か月以内に問題を修正し、精力的に打ち上げを成功させたことは、技術的に大変に素晴らしい功績だ。これは平常時でも目覚ましいことであるのに、同社においては新型コロナという課題に直面しているなかでの達成である。
同社はここまでの達成を予想していなかったという。同社は開発プログラムで軌道飛行に達するまでの7段階を定義していたが、今日は第1にカウントとリフトオフ、第2にマックスQ(地球の大気圏内での飛行で ロケットの動圧が最大に達するポイント)に達すること、そして第3に第1段の主エンジンの分離を達成することを予想していた。今日の打ち上げが成功と判断されるのはここまでであったのだが、CEO兼創業者のChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は打ち上げ後の電話で「ロケットはそのまま飛行し続けた」と語っていた。
Rocket 3.2は分離に成功し、第2段はカーマンラインを超えて大気圏外へ到達した。その後もさらに進み上段点火を達成したが、その6分後に上段エンジンが停止した。その後もロケットは目標軌道高度の390kmに達した。だが速度は毎時7.2kmで、起動速度に必要な7.68kmにわずか0.5km足りなかった。
Astraは、この段階での推進剤の配合は宇宙での現場テストでしか見極めることができないと強調。残りの速度を達成するには、上段推進剤の混合比を調整するだけだと言及している。ケンプ氏は今後数か月以内でこれを実現させ、来年初めにはペイロードの再実験を開始できると自信を見せている。これにはハードウェアやソフトウェアの変更は不要で、変数を微調整するだけとのことだ。
ケンプ氏は、コスト削減のために膨大な量のオートメーションを採用することに焦点を当てた同社のアプローチが今回の成功の鍵だと付け加えている。
「私たちはまだ創業してから約4年の企業で、チームにはわずか100人程度しかいません」とケンプ氏。「このチームは、成功までの道のりで数多くの課題を克服してきました。コディアックに向かう際に、新型コロナに感染して隔離に入ったメンバーがいました。このためにチーム全員が隔離となり、代わりにバックアップチームがコディアックに向かいました」。これが実現できたのは、打ち上げチームがたった5名で構成されていたためだ。
「当社ではたった5人のチームで打ち上げサイト全体とロケットを準備し、ものの数日で打ち上げが可能です」とケンプ氏はいう。チームは文字通りたった5名で、ロケットの荷降ろしから組立まで、現場でのすべての作業がこの5人で行われる。残りはカリフォルニア州のミッションコントロールからクラウドを通してリモートで実施されるという。
ペイロードを搭載した最終軌道試験飛行を目前に、同社は現在カリフォルニア州に位置する同社工場にてRocket 3.3の調整を行っている。その後は設計と技術の急進的な進化を通じてコストを削減し、パフォーマンスを向上させることに重点を置いて、打ち上げたRocketの各バージョンを繰り返し適用し続けていく予定だ。
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カテゴリー:宇宙
タグ:ロケット、Astra
画像クレジット:John Kraus for Astra
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(翻訳:Dragonfly)
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