耐用年数を迎えつつある全国の橋梁 AIで損傷を判定し作業効率化
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画像出典:写真AC
全国に約72万橋あると言われる橋梁。橋梁とは、主に川などの上に道路や鉄道を通すための構造物の総称だ。
多くの人に影響を与える橋梁などのインフラにおいては、致命的な欠陥が発現するまでに対策を打ち出さないといけない。しかし、橋梁のコンクリート床版上面の点検は、舗装の撤去復旧が必要なため非常に困難だった。そのために、AIを使って点検を効率化させ、さらには調査費用を抑える取り組みが始まった。
ニチレキ株式会社と株式会社グリッドは7月20日、AIと電磁波を組み合わせた技術により、非破壊で橋梁の鉄筋コンクリート床版上面の損傷箇所を判定するシステム「smart 床版キャッチャー」の開発に成功したことを発表した。
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10年後には建設から50年以上経過する橋梁が半数以上を占める
橋梁の多くは、10年後には建設から50年以上を経過する橋梁が半数を占める。耐用年数を迎え、老朽化することがインフラにおいては喫緊の課題だった。
ニチレキではこれまで、電磁波レーダーを搭載した測定車で橋梁の測定をしていた。これは、一般車両の交通の流れのなかで走行しながら測定し、非破壊で床版上面の状態を判定するシステムだ。しかし、測定車による電磁波の反射信号による判定は、熟練の技術者の判断のもとで実施されていたため、判定までに長時間必要だったり、調査コストが高かったりなどの課題があった。
そこでニチレキは、社会インフラ業界を中心としたAI開発企業であるグリッドともに、「smart床版キャッチャー」を開発した。
smart床版キャッチャーは、電磁波の反射信号に熟練の技術者が判定した結果を付与した教師データをもとに開発したAIで損傷を判定するシステムだ。
システムの全体イメージ図
調査から解析まで現場で完結 調査費用は2割も削減
従来、橋梁の損傷における解析および報告作業は事務所にて進められるものだったが、smart床版キャッチャーは計測後に損傷範囲の判定結果がクラウドに即時アップロードされる。つまりは、調査から解析までを現場で完結できるようになった。
また、smart床版キャッチャーには高精度位置情報であるRTK-GNSSを採用したことで、計測座標をもとにしたAI判定前後の作業において、熟練の技術者によって実施されていた両車線の座標合わせ作業も自動化した。
ニチレキでは、smart床版キャッチャーの導入により、作業工数を削減して定期点検の効率化を実現している。プレスリリースによれば、調査費用において従来の熟練技術者による方法と比較したところ、ニチレキ社比でおよそ2割のコストカットに成功したそうだ。
そしてなによりもポイントなのは、smart床版キャッチャーに「AI再学習機能」を取り入れている点だ。これは、熟練の技術者がAI技術者の手を借りることなくAI再学習を可能とする機能だ。この機能によって、新たに蓄積したデータをAIが再学習することで、判定の精度を向上させられるようになっている。
成果品イメージ
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AI技術で水道管路の劣化を予測 破損確率を高精度に解析
AIを活用したインフラの点検作業は水道配管においても使われている。
2020年3月に、Fractaが水道事業体に対して、AI技術を活用した水道管路の劣化状態を診断するオンライン管路診断ツールの提供を開始すると発表した。
Fractaのオンライン管路診断ツール画面
近年、水道管の老朽化や災害発生により漏水・破損事故が各地で発生したため、水道インフラに関する課題が顕在化する傾向にあり、各水道事業体は対応に追われている。
多くの水道事業体は、水道管の配管の更新には設置年数に基づいて判断している。しかし、設置年数だけで判断すると、配管周囲の環境が与える劣化への影響を十分に考慮できないそうだ。
そこで、Fractaのオンライン管路診断ツールを使えば、水道事業体は水道配管の破損確率を高精度に把握・分析可能なため、水道配管の交換における優先順位が明確となり、更新計画の最適化できる。すでに同社の診断ツールはアメリカ27州にわたる60以上の水道事業体に提供し、高評価を得ているという。
Fractaは独自のオンライン管路診断ツールを2022年までに100超の水道事業体への提供を目指し、持続可能な水道事業の運営を支援していく。
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