コロナ禍に男性「仕事時間の増加」うつリスク約3.3倍 東大がAIアプリなど活用で分析
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コロナ禍に男性「仕事時間の増加」うつリスク約3.3倍 東大がAIアプリなど活用で分析
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画像は Unsplash より

東京大学大学院医学系研究科 健康教育・社会学分野教室(近藤尚己 准教授)は8月13日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大にともなう緊急事態宣言の発令による、生活様式の変化について学術論文を発表した。

本研究は、株式会社リンクアンドコミュニケーションとの共同によるもので、AI健康アドバイスアプリ「カロママ」利用者の歩数データなどを用いた。

なお、分析期間は歩数が1月1日~5月13日。ただし、2時点の比較は、緊急事態宣言前(1月1日~2月29日)と緊急事態宣言期間中(4月7日~5月13日)を利用している。

アンケート期間は4月30日~5月8日。アンケート内容は「この1か月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくある」「この1か月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくある」の1つでも該当した場合に「うつ傾向」と判断した。

分析対象者はAI健康アドバイスアプリ「カロママ」の利用者で、「アンケートに回答し、データを研究目的に利用することに同意した人」「緊急事態宣言の発令前(1月1日~2月29日)と緊急事態宣言期間中(4月7日~5月13日)の平日の平均歩数データが得られた人」の条件に該当した3324名。内訳は男性が1238名、女性は2086名。

東京大学大学院 准教授の近藤尚己氏(医師・医学博士)は「今回のデータはAI健康アドバイスアプリ『カロママ』利用者のものであり、健康づくりに比較的関心があり、スマホなどを高度に使いこなせる人が多いなどの特徴を持っている可能性があることに留意して活用すべきでしょう」と呼びかけている(以下に全文を掲載する)。

男性は歩数が約1200歩も減少した

緊急事態宣言前(1月1日~2月29日)と、緊急事態宣言期間中(4月7日~5月13日)の平日の平均歩数を比較したところ、男性は8483歩から7320歩に約1200歩の減少、女性は6017歩から4917歩に1100歩の減少がみられた。

男性は「仕事時間の増加」でうつリスク約3.3倍に

アンケート結果から、緊急事態宣言期間中に男性の32.4%、女性の45.9%がうつ傾向になっていると判明した。

生活習慣の変化とうつ傾向の関連を調べると、男性は「仕事時間の増加」でうつ傾向のリスクが約3.3倍になる。

女性は「子育て時間の増加」「緊急事態宣言中の歩数現象」ともに、うつ傾向のリスクが1.3倍になった。一方で、女性は「在宅ワークへのシフト」をした人は、そうでない人と比べて、うつ傾向のリスクが0.7倍(約26%減)になっている。

「男性よりも女性の方がうつリスクが高い」

東京大学大学院 近藤研究室の佐藤豪竜氏(公衆衛生学修士)は、以下のように述べている。なお、同氏は東京大学 大学院医学系研究科(医学部)客員研究員、厚生労働省 課長補佐、MPH(ハーバード大学)なども務める。

東京大学大学院 近藤研究室 佐藤豪竜氏

「今回、リンクアンドコミュニケーションと共にAI健康アドバイスアプリ『カロママ』利用者の歩数データなどを用いて、生活習慣の変化がうつリスクとどのように関連しているかを分析しました。

 男性よりも女性の方がうつリスクが高いという結果は、諸外国で行われた先行研究の結果とも一致しています。女性の方が、うつのリスクが高い理由のひとつとして、女性は男性に比べて、人との交流から精神的な影響を受けやすいことがわかっています。

 本分析で、女性における歩数の減少は、うつリスクと関連する結果がみられました。歩数の減少が、外出自粛の度合いや人との交流の減少を表していると考えると、このような性差が理解できます。さらに、男性は仕事時間の増加が、女性は育児時間の増加が、うつリスクと関連していることが、今回新たにわかりました。

 東京大学による別の調査報告では、コロナの流行で、父親よりも母親のほうが育児時間が増えたということが明らかになっています。これらの結果も踏まえ、父親も育児のサポートに回れるような柔軟な働き方や在宅育児サービスを充実させることが重要であると思われます。

 一方で、在宅勤務に切り替わった人は、うつリスクが低い傾向にありました。

 国の調査では、コロナの流行期間中に在宅勤務を経験した人は約35%であり、昨年9月時点の8%よりも増えています。今後も在宅勤務を奨励していくことが、感染拡大防止対策にもメンタルヘルス対策にもなりそうです。

 『新しい生活様式』の下では、日頃から歩数などの生活の変化を記録し、活動量が減ったときは運動をしてみるなど、健康アプリの活用も心身の健康を保つうえで大切になるかもしれません」

「在宅ワークへシフトした人は比較的メンタルが安定」

また、東京大学大学院 准教授の近藤尚己氏(医師・医学博士)は、以下のようにコメントを寄せる。なお、同氏は社会疫学者、公衆衛生学研究者、東京大学大学院医学系研究科准教授(保健社会行動学分野、健康教育・社会学分野主任)、日本老年学的評価研究機構理事、日本疫学会代議員、日本プライマリケア連合学会代議員も務める。

東京大学大学院 准教授 近藤尚己氏

「まず今回のデータはAI健康アドバイスアプリ『カロママ』利用者のものであり、健康づくりに比較的関心があり、スマホなどを高度に使いこなせる人が多いなどの特徴を持っている可能性があることに留意して活用すべきでしょう。

そのうえで私が注目したのは、緊急事態宣言中に仕事時間が増えた男性の抑うつリスクが高いというデータです。

 どのような理由で仕事量が増えたのかを明らかにすることが大切かと思われます。テレワークが増えた中、テレワークできない、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる職種の方々や、オフィス内でしか使えないシステムや、オフィスでの書類の処理(印鑑を押すなど)が必要で出勤せざるを得ない方々などが、通勤や勤務量の過多などで強いストレスを感じた、といったことがあるのか、といったことです。

 もしそういった状況があるのであれば、第2波、3波に備え、可能な限り勤務場所を選ばないように、今のうちにシステムの改変や書類作業内容の見直し(ハンコを省略するなど)をすることで一部解決するかもしれません。

一方、在宅ワークへシフトした人は比較的メンタルが安定した傾向が見られました。新型コロナの蔓延を機会に、働く場を選ばない新しい仕事のスタイルを社会全体で構築していくことで、精神的にもより満たされやすい社会へと脱皮できる可能性を示唆しているように思います。

 ただし、在宅ワークしたことが精神的なリスクを減らすことに貢献したのか、もともと在宅ワークしやすい働き方を選べる人が精神的に健康な状態を維持しやすい、ということを示しているのかなど、この分析だけでは明確なことは言えない点にも留意する必要があります」

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新型コロナと戦うAI技術〜感染症患者検知や行動分析など23事例を紹介

Ledge.ai編集部では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対する、AI企業の取り組みに注目してきた。

たとえば、以下の記事では、2020年4月14日現在までの期間、見えざる脅威に対してAI関連企業はどのようなサービスを展開し”戦って”きたのか。日本企業を中心に、その軌跡を追っている。

「Withコロナ(ウィズコロナ)」や「Afterコロナ(アフターコロナ)」などの言葉も使われて久しいが、ここで改めて1月以降の動きを見つめ直してみるのも良いかもしれない。

引用先はこちら:コロナ禍に男性「仕事時間の増加」うつリスク約3.3倍 東大がAIアプリなど活用で分析

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