データサイエンスを活用し、インドのユニクロを目指すYCスタートアップSockSoho
AI.
SockSoho(ソックソーホー)は、「インドのユニクロ」になることを目指すD2Cブランドだ。同社は10か月前に男性用靴下の販売を開始し、最近Y Combinator(Yコンビネータ)のSummer 2020プログラムを終えたばかりだ。TripAdvisor(トリップアドバイザー)などの企業で勤務経験のあるデータサイエンティストPritika Mehta(プリティカ・メータ)氏とグロースマーケターのSimarpreet Singh(シマープリート・シン)氏が創業したソックソーホーの顧客は現在3万人以上を超えており、今後はメンズウェアに特化したバーティカルECの新規立ち上げを計画している。
メータ氏とシン氏は、ソックソーホーを立ち上げる以前はテクノロジーおよびコンテンツIPプロバイダーのMindBatteries(マインドバッテリーズ)で一緒に働いていた。同社の法人顧客には、The Times of India(ザ・タイムズ・オブ・インディア)、The Economic Times(エコノミックタイムズ)、Mercedes(メルセデス)、Infosys(インフォシス)、世界経済フォーラム、Uber(ウーバー)などが名を連ねる。
両氏は、インドが世界最大級にして急激に成長しているeコマース市場の1つであること、そして、事業の拡大に伴いチャットボットやAIベースのレコメンドエンジンなどを導入する独自の技術に、ソックソーホーの成長を賭けている。
ソックソーホーは、独自サイトとeコマースプラットフォームを使って販売するマルチプラットフォーム配信戦略でローンチしたが、主に売上を伸ばしているのは、ユーザー数が4億人以上にのぼるインドで最も人気の高いメッセージングアプリWhatsApp(ワッツアップ)だ。ソックソーホーの売上の約70%がWhatsAppを通じたもので、A/B製品テストにもこのアプリを使用している。
Y Combinatorパートナーであり、ソックソーホーに投資しているEric Migicovsky(エリック・ミジコフスキ―)氏はTechCrunchへのメールで、「ソックソーホーは表向きはファッションブランドに見えますが、運営はテック企業のように行われています。製品とeコマースの経路におけるあらゆる側面でA/Bテストを実施しているのです。これは、すべてのファッションブランドが行っていることではありません」と語ってくれた。
また、「ソックソーホーが成功に至った戦略はWhatsAppだと思います。WhatsAppを通じて独占的に顧客を獲得し、サービスを提供する方法を見つけたのです」とも述べている。
メータ氏はソックソーホーを立ち上げる前、バッファロー大学で人工知能を専門にコンピューターサイエンスの修士号を取得した。その後、トリップアドバイザーなどのテック企業に勤めながら数年間を米国で過ごしたが、母国であるインドには常に目を向けていた。
「インド市場の成長を見た時は、目を見張りました。人口がとても多く、データは安くなっていましたから。オンラインで買い物する人も圧倒的に増えていました。その時思ったのです。インドがこんなに盛り上がってるのに、私は米国で一体何をしているんだろうと」」とTechCrunchに話してくれた。
インドのオンラインファッションブランドの大半は女性向けの製品を中心に扱っているため、メータ氏とシン氏はメンズウェア業界への参入を決めた。インド都市部には、およそ2億人の男性がいるとされ、80億ドル(約8500億円)の潜在市場がある。両氏は消費者調査を行う前に、最初に販売する製品の候補として80個のアイテムをリストに書き出した。そして、サイズが合わせやすく発送が簡単で、販売利益が高く返品率の低い靴下を選んだ。
ソックソーホーでは、新しい靴下を販売する前にWhatsAppを通じて独自のA/Bテストを行っている。製造注文を行う前に、デザインのアイデアを顧客に送り、先行予約で顧客の関心を読み取っているのだ。
多くのD2C企業における課題となっているマーケティングコストの削減と顧客獲得には、データ分析がカギとなる。
「私たちは基本的にデータポイントを収集して、お客様の行動と消費のパターンを理解しています。こうしたインサイトによって、デザインからマーケティング、在庫計画、今後進出していくバーティカル分野まで、あらゆるものを絞り込むことができます」とメータ氏は述べている。
データ分析によって、すでにいくつかのサプライズがあった。たとえば、ソックソーホーでは顧客のほぼ全員が男性であると予測していたが、購入全体の約30%は女性によるギフト購入だったのだ。また、購入者のほとんどがデリー、ムンバイ、バンガロールといった主要都市に住んでいると仮定していたが、データではより小さな地方都市が成長の主力となっていたことが分かった。「こうしたインサイトはすべてデータから明らかになりました」とシン氏は語っている。
過去6か月で、ソックソーホーの顧客の58%がリピート購入しており、売上は3月からインドで始まった新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの最中に増大している。
「新型コロナウイルスによって、人々のオンラインショッピングへの移行が加速しています。たとえば私の父はオンラインショッピングなんてしたことがありませんでしたが、コロナ禍により、今では歯磨き粉までオンラインで買っています。これはとても大きな変化です」とシン氏は言う。
ただし従来のリテールブランドの多くが、まだオンラインでのショッピングエクスペリエンスをものにできていない、とメータ氏は付け加えた。
「eコマースは、製品を売るだけのものではありません」とメータ氏は言う。
ソックソーホーでは、顧客をつなぎとめておくためにWhatsAppを使い、新製品や顧客の写真を共有しているが、そうしたレベルの個々のエンゲージメントは、ブランドが成長するにつれ、より困難になってくる。
そこで登場するのが、ソックソーホーが開発中の独占技術だ。これには商品交換などシンプルな質問に対応できるAIベースのチャットボットが含まれている。たとえば、間違ったアイテムを受け取った顧客は、その写真をアップロードすれば交換品が送られるようになる。より複雑な問題にはフラグが付けられ、カスタマーサービス担当者に引き継がれる。
「私たちは、有人対応の経験を実際に複製できる独自ソフトウェアを社内開発しています。言語、データ、お客様が求めるエクスペリエンスの種類を理解するために、お客様との現在のやり取りなどすべてのデータを収集しているのです」とメータ氏は語っている。
またソックソーホーでは、独自のAIベースのレコメンドエンジンを開発している。これは顧客のブラウジングやショッピングの傾向に基づき、関心がありそうな製品を顧客に勧めるものだ。同社は次に拡大を進めるバーティカル分野を明らかにはしていないが、すでに次の製品ラインに向けたA/Bテストを行っている。
「テックスタックと全体的なサプライチェーンを作り、靴下で確かな成功を達成できたら、ほかのバーティカル分野にも手を広げ、いずれインドのユニクロになることはとても簡単でしょう」とシン氏は述べている。
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[原文へ](翻訳:Dragonfly)
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