TikTokやZoomとの大きな取引があってもOracleのクラウドマーケットシェアは伸び悩む
AI.
世界のクラウドインフラマーケットは直近の四半期で300億ドル(約3兆1600億円)に達した(未訳記事)が、Oracle(オラクル)はマーケットシェア一桁と苦戦している。Zoom(ズーム)とTikTok(ティクトック)との取引がこの数字を押し上げることをOracleは期待しているが、マーケットを引っ張るAmazon(アマゾン)やMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、これまで気にしていなかったいくつかの企業に追いつくにはもっと多くの名の知れた顧客を獲得する必要がある。
強制結婚と同じようなひどい買収結婚で、OracleとTikTokが手を組むことが2020年9月に明らかになったのは周知の通りだ。そうであるにも関わらず、Oracle創業者でCTOのLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏は9月19日の同社プレスリリースで、TikTokがどのようにOracleのクラウドインフラサービスを「選んだ」かについて大袈裟に述べた。声明文はまた、この「選択」がZoomのワークロードの一部をOracleのインフラクラウドに移すという2020年初めの決断に影響されたことを指摘した。
TikTokの取引における力学はさておき、問題はこの顧客2社がどのくらいOracleのクラウドインフラマーケットシェアに大きな影響を及ぼすかだ。TechCrunchはクラウド業界を注意深く観察している調査会社2社に話を聞いた。
Synergy Research GroupのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、Oracleのマーケットシェアの数字を動かすほどに大きな影響を与えると楽観視していない。「Oracleのクラウドインフラサービスの成長は常にIaaSとPaaSマーケット全体の成長率を下回っていて、つまり同社のマーケットシェアは縮小傾向にあります。Zoomというのは大きな獲得ですが、これによってシェアを大きく伸ばすというのはさほど考えられません。そしてZoomはAWSからもクラウドサービスを購入していることを忘れてはいけません」とディンスデール氏はTechCrunchに話した。
TikTokに関しては、我々と同様にディンスデール氏もこのディールが最終的にどのように決着するのかは見通せなかったが、仮に2社が提携することになってもOracleが望むようにマーケットシェアを伸ばすことにはならないだろうと話した。「仮説として、ZoomとTikTokがOracleのクラウドインフラサービスの売上高を向こう12カ月で50%増やすのに貢献するとして、これはかなりの伸びですが、マーケットシェアはそれでも3%に届かず、2%近くに止まります。一方、グーグルは9%、マイクロソフトは18%、AWSは33%です」と同氏は指摘した。
同氏はOracleのSaaS事業がかなり強固だとは考えていない。「スコープを他のクラウドサービスへと少し広げると、OracleのSaaS部門の成長はSaaSマーケット全体の成長とほぼ同じです。Oracleの企業向けSaaSマーケットのシェアは6%ほどですが、ERPを見ると明らかにずいぶんうまくやっています」と述べた。
クラウドインフラマーケットを追跡しているCanalysは、同社のデータでもOracleに関して同じような傾向が示されているとする。SaaSのマーケットシェアは7.8%とうまくいっている一方で、IaaSとPaaSでは苦戦している。
「IaaSとPaaSに関して、Oracleクラウドの2020年第2四半期のシェアは1.9%で、大きく変動していません。トップ3のプロバイダーはAWS、Microsoft Azure、Google Cloudで、シェアはそれぞれ順に30.8%、20.2%、6.2%です」とCanalysのBlake Murray(ブレイク・マレー)氏は話した。
グーグルがクラウドインフラ事業を加速させようと、5年前にDiane Greene(ダイアン・グリーン)氏を雇った(未訳記事)ことは留意しておくべきだろう。Oracleの幹部だったThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏が2年前にグリーン氏の後を継いだ(未訳記事)が、マーケット全体が成長している時期にもグーグルのマーケットシェアは二桁に届かなかった。これはシェアを大幅に拡大するのがいかに困難なことであるかを物語っている。
もう1つの大企業、IBMはクラウド事業を強化しようとRed Hatを2年前に340億ドル(約3兆6000億円)で買収した。Red Hatは好調だったが、クラウドインフラマーケットのシェアでそれほど改善は見られなかった。Synergyのデータによると、4位の座をAlibabaに取って代わられた。
つまり、顧客2社を獲得しても、Oracleが短期的にクラウドインフラ分野で存在感を示すには、まだ道のりは長いということになる。わからないのはこの新たなビジネスが今後、他の新規ビジネスを引き寄せる役割を果たすかどうかだ。しかしさしあたってはクラウドインフラで存在感を高めるためにもっと良い顧客を獲得することになる。グーグルやIBMが示すように、マーケットシェアを大きく獲得することは極めて難しい。
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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Kimberly White / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)
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