Facebookがミシガン州ウィットマー知事誘拐計画に関わった民兵組織を排除
AI.
FBIのショッキングな宣誓供述書(The Detroit News記事)から「複数の州知事を対象とした暴力行為」を計画していたグループの摘発に関する詳細が明らかになった。これには、ミシガン州知事Gretchen Whitmer(グレチェン・ウィットマー)氏の誘拐または殺害計画も記されていた。この国内テロ集団は、Facebookのグループ、プライベートなイベント、さらにFBIは名指ししていないが少なくとも2つの暗号化チャットアプリを利用して組織されていた。
民主党選出のウィットマー氏は今年の初め、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えようと外出制限を実施したことから、政治的右派の間に広がる反ロックダウン感情のはけ口として、格好の攻撃目標にされていた。宣誓供述書には、6月に対面で行われた会合で、グループのメンバーが「『暴君』の殺害または現職知事の『誘拐』について話し合っていた」と書かれている。この誘拐計画に関わった13人が起訴された(米司法省リリース)。
このグループでは、考え方が共通するミシガン州の民兵組織、いわゆるWolverine Watchmen(ウルヴァリン・ウォッチメン)が接触した時点からメンバーが増加している。6月、Facebookは、反政府運動「ブーガルー」に関連するグループの一斉排除を行った際(Vox記事)に、当時その名前は公表しなかったものの、ウルヴァリン・ウォッチメン・グループも同プラットフォームから削除(未訳記事)している。ウルヴァリン・ウォッチメンは、去年の11月から今年の6月までの7カ月間、Facebook上でメンバーを募集していた。
「本日、私たちは暴力的な米国の反政府ネットワークを危険組織に指定し、当プラットフォームから追放します」と当時Facebookは公表し、暴力的なブーガルー・グループと「緩やかに連携する」ブーガルー運動とを区別していた。
Facebookは、6カ月前に最初に法執行機関に通報するなど、FBIの捜査に「積極的」な役割を果たしたと話している。FBIは、この活動のことをソーシャルメディア上で知るようになり、グループ内の情報の収集もソーシャルメディアに依存したと述べている。
「私たちは、人や公共の安全に危険が差し迫っているとを確認した時点でコンテンツを削除し、アカウントを停止し、即座に法執行機関に通報しました」とFacebookの広報担当者はTechCrunchに語った。「我々は現在継続中の捜査の初期段階から、FBIに積極的に接触し、協力してきました」。
TechCrunchは、このミシガン州の民兵組織に参加した人は、Facebookグループに仲介されたのか否かを尋ねたが同社から返答は得られなかった。8月、Facebookはミシガン州の多数の民兵グループをFacebookとInstagram(インスタグラム)から排除しているが、その中にはMichigan Liberty Militia(ミシガン・リバティー・ミリティア)、Michigan Militia Corps(ミシガン・ミリティア・コープス)、さらにウルヴァリンを名乗るほかのグループも含まれていた。
このグループの主催者の一人と目されるAdam Fox(アダム・フォックス)氏は、今年の初め、プライベートなFacebookグループでライブストリーミング配信を行い、ミシガン州の規制によりスポーツジムの閉鎖が続いていると訴えていた。その動画でフォックス氏は、ウィットマー知事を「This tyrant bitch」(この暴君ばばあ)と呼び、「とにかく、なんとかしなければ」と呼び掛けていた。
4月、トランプ大統領は、バージニア州、ミネソタ州、ミシガン州の外出規制に抗議する人たちを称賛した(未訳記事)。この3つの州の知事は民主党所属だ。このような初期の活動の多くはFacebook上で組織されていたのだが、ウィットマー知事を嫌う感情は、他のソーシャルネットワークや従来メディア(Fox News記事)を通じて右派の間で急速に蔓延していった。
ドナルド・J・トランプ:私はミシガンが大好きだ。この忌まわしいパンデミックにあたり、彼らのために我々が大いなる仕事をしているのは、そのためでもある。だが諸君の知事、グレッチェン・間抜け・ウィットマーにはまったく困ったものだ。さっぱり理解できない。自分の能力不足の責任をキミたちに押しつけているのと同じだ。
同グループは、ミシガン州警察の施設を攻撃する考えでいたが、7月にはウィットマー氏を同氏が私的に所有する別荘か、夏用の知事公館から誘拐する計画に落ち着いた。この決定が下された同日に、フォックス氏はプライベートなFacebookページにこう書いている。「みんな、忙しくなるぞ。今が愛国心を示すとき。時間と金と地と汗と涙を捧げよう。これから始まる。準備せよ!」。
同グループは、ウィットマー氏を私的「裁判」にかけてその場で殺害する計画から、誘拐に切り替えた。その後の数カ月の間に、彼らはウィットマー氏の別荘を調査し、武器を揃え、誘拐のための詳細な兵站計画を立てた。近所の橋を爆破して警察の注意を逸らすなどといったアイデアも上がっていた。彼らはこうした計画の詳細を、暗号化チャットで話し合っていた。
宣誓供述書には「フォックスは数回にわたり、国政選挙投票日である2020年11月3日までにウィットマー知事を誘拐するとの意志と願望を表明している」と書かれている。
また宣誓供述書は、ウィスコンシン州とミシガン州の民兵組織が計画メンバーの訓練を実施したとの詳細も明らかにしている。そこには、「黒色火薬、風船、導火線、ボールベアリングを使用し」簡易爆弾を製作し、火器と戦闘の訓練も実施したと書かれていた。彼らはその技の写真と動画を「Facebookのディスカッション」で共有していたことも宣誓供述書は示している。
Facebookの変化
一部の過激派の活動に対するFacebookの態度は、この数カ月間で劇的に変化した。同プラットフォームでは武装政治グループが長期にわたり勢力を伸ばしてきたが、8月に「軍事化された社会運動」(Facebookリリース)と同社が呼ぶこの活動に対して厳しい態度に出た。そしてまさに今週、FacebookはQAnon(キューアノン)と呼ばれるトランプ支持の陰謀論グループを大幅に追放し、軍事用語を使って投票者を威嚇する行為を禁じるとの発表を行った。
同社のこのところの突然のポリシー変更が、このテロ計画の影響によるものなのかを尋ねたが、Facebookは直接の返答は得られていない。また、この国内テロ計画がFacebookグループを使ってメンバーを募りオンラインでつながっていたのか、またはすでに実生活で顔見知りのメンバー同士の連絡用に使われていたのかも、定かではない。
過激派に詳しい研究者たちは、ずっと以前からFacebookのアルゴリズムによる「おすすめ」がユーザーを危険な思想に、そして危険な行動に傾かせるとの懸念を表明してきた。
民兵組織もその他の国内の過激派グループも、近年Facebookで人を集める方法に長けてきた。ひとたびメンバーとつながり、公共の団体などを通じて身元が確認されたユーザーは、中核的な仲間に加えられる。それは時にプライベートなFacebookグループのかたちをとっている。白人至上主義者と結びついている暴力的な極右グループであるThe Proud Boys(ザ・プラウド・ボーイズ)は、こうした人集め戦略に長けた最たる例(未訳記事)だ。
ユーザーは、以前はグループの活動の横のボックスに表示されていたFacebookのアルゴリズによる「おすすめ」によって、これらの過激派グループに導かれる。Facebookページでは、そうしたおすすめは、今でもメインの投稿の脇に現れ、「関連するページ」にユーザーを導くかたちになっている。
Facebookは、2018年末にThe Proud Boysを追放した。しかし暴力を好むグループは、身を低くして活動を続け、2020年においても同プラットフォーム上で大きな存在感を維持している。州ごとに存在し、Facebookを通じて武器を手配したり戦闘訓練を行う数々の「愛国者」組織や反政府ブーガルー・グループ(Vox記事)などがそうだ。
6月にFacebookはブーガルー・グループの「暴力的なネットワーク」を禁止(未訳記事)したが、他のグループはブーガルー運動に関連した合言葉で組織され、生き残っている。TechCrunchが特定したブーガルー・ページは、「決してブーガルーではない」と自称しているが、今週の時点でもまだBoogaloo Boys(ブーガルー・ボーイズ)のワッペンを販売し、暴力的なネタを掲載していた。
この手の活動を追いかけている研究者と報道関係者にとって残念なのは、公開グループの参加人数を検索ページで簡単に調べられるオプションをFacebookが廃止してしまったことだ。
Facebookは先日、公開グループのリーチを拡大(未訳記事)して、より多くのユーザーの目に触れるようにする計画を発表した。「公開グループの投稿は、Facebook内外でより広く行き渡るようになり、より多くの人がそれを見つけ、会話に参加できるようになりました」とFacebookはそのお知らせに書いていた。
カテゴリー:パブリック/ダイバーシティ
タグ:ドナルド・トランプ、Facebook
画像クレジット:Photo by JEFF KOWALSKY/AFP via Getty Images / Getty Images
[原文へ](翻訳:金井哲夫)
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