Harley-Davidsonは電動バイクを作り続けるべきだ
AI.
Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は電動バイクを作り続けるべきである。これが同社のLiveWire(ライブワイヤー)を3週間かけて試乗した後の私の結論だ。
著者は2019年にこのバイクを試乗コースで試乗したことがあるが、それではこの105馬力のLiveWireの実力を十分に知ることができなかった。1か月近くかけて1000マイル(約1610km)の距離を走った今回、このバイクはHarley-Davidsonがこれまでに生産してきた中で最も革新的なバイクと言っても過言ではないと感じている。
無論、このバイクが完璧という意味ではない(特に価格面)。しかし、クロームとスチールを愛する同社の主要市場である団塊の世代の高齢化と売上の減少を受け、同社は新たな方向へ向かう必要があったのである。
同社初のEV
同社は当初LiveWireを1つのコンセプトとして誕生させ、その後メーカー初の量産EVへと発展させ、2019年後半にリリースを実現した。電圧駆動の同2輪車は同社が誇る内燃式クルーザーを補完するものであり、置き換えるためのものではない。
1903年にミルウォーキーで創業したHarley-Davidsonは、将来的にオートバイから自転車、スクーターにいたるまで電動車のラインナップを増やしていく計画を立てるべく、2018年にシリコンバレーにオフィスを開設した。2万9799ドル(約314万円)のLiveWireがその第一号だ。しかし、収益の衰退と新型コロナがもたらした不況により、同社の電動化計画は疑問視されている。
主なスペックをご説明しよう。Livewireは3秒で60mph(約90キロメートル毎時)を達成。最高速度110 mph(約177キロメートル毎時)で、DC急速充電器を使用してわずか40分で充電を80%完了させることが可能だ。15.5kWhバッテリーとマグネットモーターが86フィートポンドのトルクを発生させる。
548ポンド(約250kg)のLiveWireは146マイル(約235km)の航続距離をうたっている(市街地とハイウェイを合わせた場合は95マイル(約153km))。この電動ハーレーはまた、IoTとアプリ互換性のある車両であり、パワー、トルク、回生ブレーキの異なるコンボが設定できるプリセットのライディングモードを備えるほか、カスタムモードを作成することも可能だ。
同社はまたLiveWireにキーフォブ操作や盗難防止コントロールシステム、バイクの鼓動のような振動などを含むプレミアム機能を追加した。
これは停止時に無音になるLiveWireがまだランモードであることをライダーに思い出させるのに便利な機能である。このバイクは走行中は基本的に静かだが、内燃機関のごう音で有名なHarley-Davidsonは車両の機械的な動きから発生する特徴的な電気音を加えている。これはかろうじて聞こえる程度のものだが、電動ハーレーとして他とは一線を画すものとなっている。
乗り心地
LiveWireは、バッテリーという1つの場所に非常に多くの質量が集中している電動バイクの二輪車でありながら、非常にバランスが取れたものとなっている。
LiveWireは500ポンド(約227kg)以上と同社のクルーザーの基準としては決して重くはないが、ネイキッドスポーツバイクとしてはずいぶん重く感じられる。ガレージ周辺でEVを押すと確かにその重さを感じるが、幸いなことに巧みなフレームエンジニアリングのおかげで、動きだせばその重さは見事に消えていく。
2019年にLiveWireをコースで試乗した際、私はわずかなノイズ、巨大なトルク力、稲妻のような瞬時の加速力など、電動バイクに期待すべきこと全てが備わっていると言う感想を述べている。
しかし今回、LiveWireとさらに多くの時間を共にしてライディングコンディションを経験したことで、その評価はさらに上がることになる。私はハドソン川渓谷を下ってマンハッタンへと向かうI-95で3桁までスピードを上げ、そしてグリニッジ周辺の曲がりくねった裏道へと向かった。LiveWireは見た目も性能も一流の電動バイクの域に達しているだけでなく、多くの点でピストン式のものよりもさらに刺激的な乗り心地となっている。
内燃式のモデルと比べてLiveWire最大の魅力はトルク力と加速力である。ガソリン式バイクよりも機械の可動パーツが少なくクラッチやシフトがないため、内燃機関よりも強力で安定したパワーデリバリーを実現している。単純にひねるだけで出発だ。
他の高性能電動バイクと同様、LiveWireの回生ブレーキ(モーターがバッテリーを充電し、スロットルから後輪を減速させるもの)も性能の向上に一役買っている。回生ブレーキの調整は手動または電動ハーレーのライディングモードで行うことが可能だ。
これには多少のスキルが必要だが、慣れれば機械的なブレーキをほとんど使わずにスロットルを操作するだけで、ガソリン式のバイクよりもスムーズにコーナーを駆け抜けることができるようになる。これに加えて横方向のハンドリングが加わり、ターンではTron(トロン)のライトサイクル並みに正確にラインを保持することが可能になる(少なくともそんな感覚に陥る)。
こういった全ての要因により、ガタつきのないスムーズな走りが実現した。また、EVとハーレーの両方にふさわしい美しいラインとスタイリングで、このバイクの見た目も最高峰の出来となっている。
市場
LiveWireのデビューにより、Harley-Davidsonは米国で初めて公道用電動モーターサイクルを製造する大手ガソリン車メーカーとなる。
米国のほとんどのモーターサイクル業界と同様に売上が数年下降しており、若年層の顧客への販売において不調が続いている同社にとって、この動きが必要不可欠なものであったということは間違いない。
同社はホンダやカワサキなどの伝統的なモーターサイクルメーカーに先手を打ったが、電動二輪車業界に競合は山のようにいる。
ガソリン車ユーザーを電動製品へと転向させ、若い世代を引き付けようと試みる電動モーターサイクルのスタートアップが複数存在するEV産業へHarley-Davidsonは参入したというわけだ。
この業界を率いる企業の1社は、世界中に200のディーラーを抱えるカリフォルニアのスタートアップ、Zero Motorcycles(ゼロ・モーターサイクル)だ。イタリアのEnergica(エネルジカ)は、米国で高性能電動モーターサイクルの販売を拡大中だ。
またカナダ発のスタートアップDamon Motors(デーモンモーターズ)は今年、最高速度200mph(約322キロメートル毎時)のHypersport(ハイパースポート)を2万4000ドル(約260万円)でリリースした。独自の安全性とエルゴノミクス技術を用いて調整可能なライディングポジションと死角検出を実現している。
無論、特に新型コロナの影響による世界的な不況を考えるとこれら新モデルに対する需要があるか否かは確かでない。
市場におけるLiveWireの成功(または失敗)については、同社の報告にLiveWire専用の販売データが含まれていないため評価が難しい。私やその他の人々が批判的だったのは、このバイクの価格が2万9000ドル(約305万円)だと言う事実である。Tesla(テスラ)モデル3よりも数千ドル安いだけのこの価格帯は、プレミアムバイクとはいえ高すぎだ。これは非常に重要な欠点ではあるものの、この価格を別にすると、LiveWireは様々な点で成功であると私は考えている。Harley-Davidsonは同社らしさを失うことなく、世間のEVに対する関心を集めながら正真正銘の電動モーターサイクルメーカーとしての地位を確立したのだ。
今後の動き
ローンチの成功の利点を最大限に活かすには、人々がより手に入れやすい次なる製品を開発する必要がある。Harley-Davidsonは7月にJochen Zeitz(ヨッヘン・ツァイツ)氏を新たなCEOとして任命し、売上の減少に対応し会社を未来に導くための、Rewire(リワイヤー)と名付けられた5年計画を発表した。この戦略には大規模なリストラの他、同社のガスエンジン車であるBronx(ブロンクス)モデルなど以前に発表されたプログラムの休止や中止などが含まれている。
LiveWireや新型EVの生産がHarley-Davidsonの将来の選択肢として残っているかどうかについて、ツァイツ氏は最近の声明や投資家への発表の中で具体的に語っていない。
この象徴的なアメリカ企業はEV製品を今後も作り続けるべきだ、というのが同社の電動バイクのデビュー作を事細かく精査し、市場を評価した後の私の意見である。オンデマンド機能と魅力を盛り込み、より多くの人が手にすることのできるLivewireの進化版を提供すべきである。
都会でも活躍するスクーターや、幅広い市場に受け入れられるより手頃な電動モーターサイクルなど、同社の次のEV製品のリリースを著者は心待ちにしている。
著者が考える同社の次の電動モーターサイクルは、549ポンド(約250kg)のLiveWireよりも軽く、初心者ライダーにとっても乗りやすく、クラウドとアプリに接続可能、価格は約1万ドル(約105万円)で航続距離は少なくとも100マイル(約160km)、充電時間は30〜40分といったところだ。いくつかオフロード機能も備えた、Harley-Davidsonのフラットトラックレーサーを思わせるトラッカースタイルのEVも良いかもしれない。
画像クレジット:Jake Bright
新型コロナの影響を受けた経済環境において、モーターサイクルなどの製品に対する購入意欲は当面の間より保守的になるため、的確なスペック、スタイル、価格設定は一層重要になってくる。
しかし、Harley-Davidsonが若い市場を開拓し、21世紀のモビリティの世界にふさわしい存在であり続けるためには、EV生産へのコミットメントを継続することが最善の策であることに変わりない。同社のRewire計画には間違いなくより多くのLiveWireが含まれているべきである。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:ハーレーダビッドソン 電動バイク レビュー
[原文へ](翻訳:Dragonfly)
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