「Googleに葬られる前に制裁措置を」135の企業や組織がEUの独占禁止法トップに訴える
AI.
旅行、宿泊、雇用などの業界でサービスを提供する135のスタートアップとハイテク企業の連合が、Google(グーグル)に対して独占禁止法違反の制裁を課すよう欧州委員会を促す書簡を提出し、制裁を迅速に実施しなければ存続が危ぶまれる企業もでてくると警告した。
同連合はまた、欧州委員会は今すぐ行動を起こす必要があり、そうでなければ、12月初めに草案がまとめられることになっているデジタル規制の順調な改革が台無しになるリスクがあると主張している。
この書簡には、Booking.com(ブッキングドットコム)、Expedia(エクスペディア)、Kayak(カヤック)、OpenTable(オープンテーブル)、Tripadvisor(トリップアドバイザー)、Yelp(イェルプ)などの老舗インターネット企業をはじめ、冒頭で挙げた3つの業界のいずれかに属する数多くの(ほとんどの場合)小規模な欧州スタートアップが署名している。
それ以外の30の共同署名者には、メディア・出版などの関連分野、他の分野の業界団体や組織が名を連ねており、合計165の団体が、グーグルに対して迅速に独占禁止法違反の制裁を課すよう求めている。
TechCrunchが問い合わせたところ、欧州委員会の広報担当者はグーグルを批判する連合からの書簡を受け取ったことを認め、「時期が来れば」返答すると述べた。
「実力で勝負していない」
この点は以前から指摘されており、旅行業界ではすでに何年も前から苦情の声が上がっている、と欧州委員会は述べている。企業連合(米国に拠点を置く企業を含む)は拡大しており、グーグルの活動を制限するよう、団結してEU独占禁止法の担当者に圧力をかけている。例えば、TechCrunchは最近、旅行関連スタートアップの苦情について報じたが、雇用関連企業も同様の苦情を訴えるようになっている。
先に書簡を受け取ったReuters(ロイター)によると、この企業連合による訴えは、EU競争当局に対する共同の訴えとしてはこれまでで最大規模であるという。
TechCrunchも同書簡の内容を確認することができた。この企業連合は、グーグルがGoogle Shopping(グーグル・ショッピング)をめぐる2017年のEU競争法の執行決定に違反している、と主張している。この執行決定は、巨大IT企業であるグーグルが自社を優先しライバルを不当にはじき出すことを禁じている。
同連合は、グーグルがインターネット検索における支配的な立場を不当に利用して、同社が事業を展開する分野で市場シェアを獲得していると主張している。具体的には、グーグルが一部の検索結果を上部に表示する機能(「OneBoxes(ワンボックス)」と呼ばれる)について、それがインターネットユーザーに対して同社のサービスを強調し、同時にライバル企業のサービスからユーザーを遠ざけていると指摘する。
欧州委員会は、今後の立法案でこのような自社優先機能を制限することを検討している。この案は「ゲートキーパー」としての主要なインターネットプラットフォームへの適用が考えられており、グーグルはおそらくこれに分類されるだろう。
今のところ、このような事前規制は存在しない。しかし連合は、自分たちの企業にとって手遅れになる前に、欧州委員会はすぐに既存の独占禁止法の権限を行使して、市場におけるグーグルの不正行為を止める必要がある、と主張している。
「ほぼグーグルの独壇場である一般検索サービスに、自社に特化した検索サービスを技術的に統合したことは、明らかに支配的立場の濫用である 」と、彼らはVestager(ベステアー)氏への書簡で主張している。
書簡では次のように述べられている。「これまでのサービスとは異なり、グーグルは他者、つまり我々を犠牲にして、こうした市場での競争に関連するデータやコンテンツを蓄積してきた。グーグルは、市場での地位を実力で戦って獲得したのではない。 それどころか、グループ化された特定の検索結果をさまざまな形式で表示して自社サービスを一般的な検索結果ページ内で優先的に扱うことで、グーグルは不当な利益を得ている、というのが世界的なコンセンサスだ」。
グーグルがライバルを犠牲にして自社のサービスを不当に推し進めていることに関する同様の苦情は、2020年10月に提起された米国司法省の反トラスト法訴訟にも見られる。これは間違いなく、欧州でグーグルへの苦情を申し出た企業がその取り組みを強化するための後押しとなる。
2017年、欧州委員会はグーグルがインターネット検索の支配的企業であると判定した。 このことは、EU法の下では、グーグル・ショッピング訴訟で特定された侵害行為と同種の行為を、その市場シェアに関係なく、他のビジネス分野でも行わない責任があることを意味する。
独占禁止法担当者のMargretheVestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は、欧州委員会で競争政策の担当者として在任した1期目(現在は2期目)に大手テック企業と対決したことで高い評価を得たが、現在はEUのデジタル戦略を構想するEVP(エグゼクティブバイスプレジデント)としての役割も兼ねている。
しかし、彼女の監視下で、グーグルはグーグル・ショッピング検索(2017年)、Android(アンドロイド)モバイルOS(2018年)、AdSense(アドセンス)検索広告仲介事業(2019年)をめぐる独占禁止法の執行に直面してきている一方、独占禁止法違反を申し立てた側は、巨大IT企業グーグルの支配を取り除き、特定の市場や他の場所に競争を回復する上で、規制措置は何の役割も果たしていないと述べている。
企業連合は2020年11月12日付の書簡の中で、「2017年6月27日の欧州委員会のグーグル検索(ショッピング)判決は、グーグルが同社の支配的一般検索サービスの検索結果ページ内で自社サービスを売り込むことは許されないという先例を示した(と思われていた)。しかし、現時点では、この判決はグーグルが重要な何かを変えることにはつながっていない」と主張している。
欧州委員会は、同グーグルショッピング判決により、競合他社がグーグルに掲載した商品の「ショッピング」タブでの表示率が大幅に増加した(73.5%増)と主張し、「ショッピング」タブでクリックされたグーグルの商品とライバル企業の商品の割合はほぼ同等であることも指摘している。ただし、グーグルがショッピング検索での(一部の)市場シェア喪失を、他の分野(旅行や雇用など)のシェアを拡大することで補っているのであれば、バランスのとれた効果的な独占禁止法上の改善措置とはならない。
また、興味深いことに、今回の書簡にはFoundem(ファウンデム)のCEO、つまりグーグル・ショッピング訴訟におけるショッピング比較エンジンの不服申立人の署名も含まれている。
欧州委員会の広報担当者は本日発表した声明の中で、「我々は、規制措置の有効性を評価する観点から、引き続き慎重に市場を監視していく」と語り、「グーグル・ショッピングは、同社が提供する専門検索サービスの1つにすぎない。 2017年6月に下した判決により、グーグルの求人やローカル検索など、他の専門検索サービスについても検討できるフレームワークが整っており、これに関する予備調査はまだ進行中だ」と続けた。
欧州委員会が今後予定している「デジタルサービス法」と「デジタル市場法」の一括政策について、企業連合は、グーグルによる不正行為を抑制するための措置が現在十分に取られていないことが原因で、これらの今後の規制によって不正行為を是正することが不可能になるおそれがあると示唆している。
「懸案の競争調査において、欧州委員会がグーグルの現在の行為を『公平な扱い』として受け入れる場合、これは、今後の自己優先に対する法的禁止措置の意味を事前に定義するリスク、故にその価値を下げるリスクを生む。競争抑制的な拡大の進行を防ぐために必要な対策が今すぐに講じられないというだけで、競争とイノベーションは阻害され続けるだろう」と企業連合は警鐘を鳴らす。
さらに彼らは、立法化があまりに遅すぎて独占禁止法の是正措置として役に立たないと主張している。その間、他の企業は、グーグルの存在によって生き残れなくなるリスクを抱えたままビジネスを続けることになる。
「デジタルゲートキーパーに的を絞った規制は長期的には有効かもしれないが、欧州委員会はまず、既存の手立てを使ってグーグル・ショッピングの判例を強化し、グーグルの一般的な検索結果ページ内での平等な扱いを確保すべきだ」と彼らは主張し、「支配的一般検索エンジン」を規制するための欧州委員会のプランはおおむね歓迎するが、スピードが最も重要であることを強調したい、と付け加えた。
企業連合は次のように続ける。「我々は、グーグルによって排除されるという差し迫ったリスクに直面している。 我々の多くは、このような規制が実際に施行されるまで耐えられるだけの強みやリソースを持っていないかもしれない。今こそ行動が求められている。何らかの有意義な規制が発効するまで、グーグルが自社の専門検索サービスの競争抑制的な優遇を続けることが許されるならば、我々のサービスは取引量やデータ、そして実力による革新の機会が不足し続けることになるだろう。規制が発効するまで、我々のビジネスは、グーグルの競合サービスに利益を提供しながら、長期的には自社のサービスを陳腐化させるという悪循環に陥り続ける」。
グループのビジネス手法に対する批判への対応を求められたグーグルの広報担当者は、次のような声明を出している。 「ユーザーがグーグルに期待しているのは、最適で高品質な、信頼できる検索結果を提供することであり、特定の企業や商業上のライバルを他の企業よりも優先したり、ヨーロッパの人々にとってより多くの選択肢と競争を生み出す有用な新サービスの提供をやめたりすることは期待していません」。
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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google 独占禁止法 ヨーロッパ
[原文へ](翻訳:Dragonfly)
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