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Rocket Labのブースター回収「完全成功」の詳細
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すでに報じたとおり、Rocket Labは、Electronロケットのブースターを逆噴射によって降下速度を制御してニュージーランド沖の太平洋に無事着水させた。これは衛星打ち上げロケットの再利用における決定的なマイルストーンを達成したことを意味する。CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏はミッション完了直後にメディアに対して「回収は完全に成功した」と発表した。同社はこの打ち上げを機に小児科病院へのチャリティとして28万6092ドル(約3000万円)を集めることに成功した。

今回の打ち上げはアップデート版のElectronシステムにとって最初の打ち上げテストだった。改良点は、まずブースターが切り離し後に制御された降下を行うことができるようにされた。このシステムはインターステージ(ブースターとその上段の第2段ロケットの中間)に設置された。

RocketLabでは将来はヘリコプターによって空中でブースターをキャッチすることを計画しているが、今回は最初のテストなのでそのまま着水させることとした。「ブースターを海から引き上げるのは楽な作業ではありません」とベックは述べている。

打ち上げ前からブースターの降下場所はおおよそわかっていた。ロケットの軌道が慎重に計算されていたのはもちろん、対象地域の天候も詳しくモニターされていたからだ。また打ち上げ後はロケット自体から位置情報がストリーミングされた。これにより降下箇所の予測がますます精度を増した。

ベック氏の説明によれば「降下地点には、回収船に搭載されたヘリコプターが待機していた。ヘリはロケット打ち上げと同時に予測される再突入地点に飛んだ。ブースターが降下プロセスに入った瞬間から、位置、速度などのテレメトリーによりリアルタイムで着水地点の予測が始められました。このプロセスでは常にリアルタイムのフィードバックループがありました」ということだ。

2段目から切り離された後、ブースターは降下を開始しておよそマッハ2の速度に達した。ここで最初のパラシュート、パイロットシュートを展開し、続いてドローグシュートを開き約1分間で速度を落としてからメインとなるグライダーシュートを開傘した。この大型パラシュートの軌道は予測可能であり、将来はヘリコプターで空中でピックアップされる。今回は着水だったため、予定地点の「数キロ以内」に降下すればよかった。着水時の速度は秒速9m(時速32km)だった。

画像クレジット:Rocket Lab

ベック氏はミッションコントロールにいることができたため「助かった」と語った。「海の状態からすると、ボートに乗っていなかったのは幸運でした。復路は5mのうねりがありました。私自身は海には特に強くないのです」と認めた。ブースターは断続的だが正確なテレメトリーを送り返していた。その間もペイロードを搭載した第2段が衛星軌道に向けて上昇していた「本来のミッションである第2段の情報から目を離すのは、ブースターのテレメトリーを見るのはカンニングしているような気分でした」という。ベック氏は、「見たところ私ははしゃいで笑っている小学生みたいだったのではないかと思います」と付け加えた。電話で話した別のRocket Labの担当者が実際そうだったと認めている。

回収船は着水直後に太平洋からブースターを回収し、発射地点のニュージーランドに戻った。現在、同社のエンジニアがブースターを分解して部品の摩耗や損傷をチェックしている。「再突入の環境は上昇段階より厳しいのです」とベックは説明する。打ち上げ時にはすべてが綿密に計画されているが、降下時のコントロールはよくて半分までだ。これによりハードウェアには上昇時より大きな負荷がかかる。

チームは、多数の部品が次の打ち上げに使えるかどうかのチェックを行っているが、ロケットエンジンには再利用の予定はない。「彼らの乗り心地を考えると、エンジンはかなり厳しいでしょう。かなりの高熱にさらされてますからね」とベックはは説明した。

画像クレジット:Rocket Lab

これらはすべて計画されたことだった。ブースターの降下からのデータを使用して熱シールドなどの部品は再突入の際の熱や振動に対処するために必要な強化を受ける。「将来はエンジンも再利用します。目標はブースターステージ全体を無傷で回収し、整備してさらに飛行させることです」とベック氏は述べた。

いうのは簡単だが、これは複雑なタスクだ。すべてのコンポーネントをチェックして飛行に適すると確認する必要がある。ただしこの作業はElectronの2段目ロケットの生産と並行して実行できる。ベック氏によれば現在は打ち上げは月1回のペースだが、スピードはさらに速くなりつつあるという。つまりブースターの再利用は同社が所有するロケットの数を大幅に増やす効果があるはずだ。

回収再利用には、回収そのものに加えて整備と再チェックのコストもかかるため、トータルの収支への影響は「現在のところ流動的です」とベック氏は強調した。「しかしElectronの製造コストの大部分はブースターなので、ここを効率化できればシステムの経済性を大きくアップすることができます。2021年中にはコスト面への影響もすべて把握できればベストですが、来年中というのはムリかもしれません」という。

しかし確かなことが1つある。衛星打ち上げにとってコストが要因である限り、再利用こそがロケットの未来だ。

今回の打ち上げは別の面でも大成功だった。その1つがペイロードのノーム(小人)だ。この3Dプリントされたノームの宇宙への旅のチャリティに巨大ゲームプラットフォームのValve SoftwareのファウンダーであるGabe Newell(ゲイブ・ニューウェル)氏が参加した。打ち上げがライブストリーミンされたが、ニューウェル氏はビューごとにスターシップ小児科病院(Starship Children’s Hospital)に1ドルを寄付することを約束し、結果28万6092ドルが集まった。

「チョムスキー」と名付けられた小人は、すでに燃え尽きているかもしれないが宇宙でエキサイティングな時間を楽しみ、いくつか印象的な画像を残した。

【編集部追記】小人の名前は著名な文法学者Noam Chomsky(ノーム・チョムスキー)から。

画像クレジット:Rocket Lab

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カテゴリー:宇宙
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画像クレジット:Rocket Lab

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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