Alphabet傘下のAI技術企業DeepMindがAIベースのタンパク質構造予測で歴史的なマイルストーン
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Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)の傘下にあるAI技術企業DeepMind(ディープマインド)は、AIを使ったタンパク質の構造予測で大きなブレイクスルーを達成した。同社は米国時間11月30日、そのAlphaFold(アルファフォールド)システムが、50年前から科学界を悩ませてきた重要課題だったタンパク質のフォールディング(折りたたみ)問題を解決したと発表した。今回のAlphaFoldの進歩は、疾患の理解や将来の創薬、製薬の分野で、大きな飛躍につながる可能性がある。
AlphaFoldが今回合格したテストが示すものは、AIがタンパク質の構造をわずか数日のうちに、非常に高い精度で(実際、原子の幅の範囲内で正確に)把握できるということだ。これは疾病がどのように治療できるかを発見するために重要な、極めて複雑な仕事であるだけでなく、有毒廃棄物のような生態系の中で危険な物質を分解するための、最適な手法を見つけ出すような大きな課題を解決することも可能となる。おそらく「Folding@Home」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない、これは、タンパク質のフォールディング実験に個人が自分の家庭用コンピュータ(かつてはゲーム機)の処理能力を提供できるプログラムだ。こうした大規模なグローバルクラウドソーシングの取り組みが必要だった理由は、従来の方法では部分的なフォールディングの予測にも何年もかかり、直接コストや計算リソースの面で非常に高価だったからだ。
DeepMindのアプローチは「Attention-based(アテンション・ベースド)ニューラルネットワークシステム」(基本的に、効率を上げるために特定の入力に注目できるニューラルネットワーク)も利用している。システムは、タンパク質のフォールディング履歴に基づいて、可能性のあるタンパク質のフォールディング結果の予測を継続的に洗練させていくことができるため、結果として非常に正確な予測を提供することができる。
タンパク質がどのようにして折りたたまれるのか、つまり、最初に作られたときのランダムなアミノ酸の列から、どのようにして最終的に安定した複雑な形の3D構造になるのか、病気がどのようにして広がっていくのか、そしてアレルギーなどの一般的な状態が、どのように引き起こされるのかを理解するための鍵となる。折りたたみのプロセスを理解していれば、それを変える可能性も生まれ、感染症の進行を途中で止めたり、逆に、神経変性や認知障害につながるフォールディングの間違いを修正したりすることができる。
DeepMindによる技術的な飛躍は、こうしたフォールディングをはるかに短時間かつ省資源の処理で正確に予測することを可能にし、病気や治療法の理解が進むペースを劇的に変える可能性がある。この成果は、私たちが現在苦痛に直面している新型コロナウィルス感染症(COVID-19)同様の、将来起こりうるパンデミックなどの世界的に重大な脅威に対処する役に立つだろう。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような脅威が将来新たに出現した際に、初期の段階でウイルスのタンパク質構造を高い精度で予測することで、効果的な治療法やワクチンの開発をスピードアップできるのだ。
カテゴリー:バイオテック
タグ:Alphabet、DeepMind、タンパク質
画像クレジット:CHRISTOPH BURGSTEDT/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images
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(翻訳:sako)
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