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SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった
AI.

年間収益が最近200億ドル(約2兆880億円)を突破したCRMの強豪であるSalesforce(セールスフォース)は米国時間12月1日、Slackを277億ドル(約2兆8740億円)で大型買収し、エンタープライズソーシャルに深く踏み込んでいくと発表した。先週には保留中の買収の噂が浮上し、Slackの株価が急騰していた

Salesforceの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、今回の買収について言葉を濁さなかった。「これは相性抜群の縁組みです。SalesforceとSlackはともにエンタープライズソフトウェアの未来を形作り、あるゆる人々がオールデジタルで世界中のどこでも仕事ができるように、働き方を変えていくでしょう」とベニオフ氏は声明で述べた。

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏も、将来の上司に劣らず喜びを表現している。「ソフトウェアがあらゆる組織のパフォーマンスにおいてますます重要な役割を果たすようになるにつれ、私たちは複雑さを減らし、パワーと柔軟性を高め、最終的にはより高度な調整と組織の俊敏性を実現するというビジョンを共有しています。個人的には、これはソフトウェアの歴史の中で最も戦略的な組み合わせだと思っています。一緒に始めるのが待ち遠しくて仕方ありません」と、バターフィールド氏は声明で述べている。

すべての企業の、すべての従業員はコミュニケーションをとる必要があるが、Slackはそれを巧みに強化させることができる。さらに、Slackは顧客やパートナー企業との外部コミュニケーションも円滑にする。Salesforceのような企業とその製品群にとって、それは非常に有益なものになるはずだ。

最終的にSlackは買収の機が熟していたのだ。Slackは株式公開後、2020年に入る頃にはその価値の約40%を失っていた。直近の決算報告(未訳記事)後には、同社の価値は16%下がり、Salesforceの買収がリークされる前は、1株あたりの価値が直接上場の基準価格よりも数ドル高いだけだった。2020年7月31日までの2つの四半期の間に1億4760万ドル(約154億1600万円)の純損失を計上し、Slackの魅力的でない公開評価と収益性への曲がりくねった道は、今回のような買収の標的となっていた。ここでの唯一の驚きはその価格だ。

YahooファイナンスとGoogleファイナンスの両方によると、Slackの現在の評価額は250億ドル(約2兆6100億円)強で、時間外の価格変化が非常に小さいことを考えると、市場が同社にある程度効果的な価格を付けたことを意味する。Slackは買収が明らかになる前の評価額から約48%上昇した。

また、今回の新たな買収により、Salesforceはかつてのライバルであり、時には友人でもあったMicrosoft(マイクロソフト)と肩を並べ、そして競い合う(未訳記事)ことになる。同社のMicrosoft Teamsは市場でSlackと直接競合する製品だからだ。マイクロソフトは、過去にSalesforceが今回支払う金額の数分の1でSlackの買収を断念した(未訳記事)が、ここ数四半期はTeamsを重要な優先事項としており、エンタープライズソフトウェア市場の一片たりとも他社に譲ることを嫌っている。

Slackが他の企業とは一線を画していたのは、少なくとも当初は、他の企業向けソフトウェアとの統合が可能だったからだ。これにボットやインテリジェントなデジタルヘルパーを組み合わせれば、同社はSalesforceの顧客に集中的に仕事ができる中心的な環境を提供できる可能性がある。必要なことはすべてSlackでできるからだ。

今回の買収はSalesforceにとって、2016年に7億5000万ドル(約783億円)で買収したQuipに続くものだ。QuipはSaaSの巨人にドキュメントをソーシャルに共有する方法をもたらした。Slackの買収と組み合わせれば、Salesforceは自社内のオプションであるChatter(エンタープライズソーシャルの初期の試みで現実にはまったく普及しなかった)よりも、はるかに堅牢なソーシャルストーリーを伝えることができる。

注目すべきは、マイクロソフトがSlackに興味を持っていると報じられたのと同じ2016年に、SalesforceがTwitter(ツイッター)に興味を持っていたことだ。最終的には、株主の反対を受け、ソーシャルプラットフォームの物議を醸している側面を扱いたくないということで買収から手を引いた。

Slackは2013年に設立されたが、その起源(未訳記事)は2009年に設立されたGlitchというオンラインマルチプレイヤーゲーム会社にまで遡る。このゲームは最終的には失敗に終わったが、このスタートアップは会社を作る過程で社内メッセージングシステムを開発し、それが後にSlackへと発展した。

その歴史的な成長によってSlackは非公開の間に10億ドル(約1044億円)以上を調達し、2019年の株式公開前に70億ドル(約7310億円)もの評価額を獲得した。「Glitchがユニコーンになった」ストーリーは単純に見えるものの、Slackはマイクロソフトだけでなく、Cisco(シスコシステムズ)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、さらにはAsanaやMonday.comといった企業との競争に常に直面している。

Slackにとって、公開市場への道のりは誇大広告と予想外の期待に満ちていた。同社はすでにSalesforceと同じくらい有名だった。当時、そのデビューはインディーズ会社としての長い期間の始まりだと感じられた。しかしそうはならず、その期間は巨額の小切手によって切り詰められてしまった。これが「食うか食われるか」のテック業界だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesforceSlack買収

画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

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