一問一答:出光興産とグリッドによるAIを活用したサプライチェーンでの計画策定最適化の取り組みの裏側
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AI専門メディアLedge.aiでは、定期的にさまざまな業界におけるAIのスペシャリストを招き、パネルディスカッション形式で最先端の情報に触れられるLedge.ai Webinarを開催している。
10月14日に開催したLedge.ai Webinarでは、「出荷予測や最適化技術でサプライチェーンはどう変わる?AIを活用した最適化ソリューション」をテーマに、サプライチェーンにおける課題を解決する「AI最適化ソリューション」を提供する株式会社グリッドと、すでに「AIを活用した最適化」を部分的に進めている出光興産株式会社が登壇した。パネルディスカッションでは、「サプライチェーン」をキーワードに、AIを活用した出荷予測がもたらす変化について、現場課題に基づいた実運用されるための計画策定などが話された。
本稿では、グリッドと出光興産が登壇したLedge.ai Webinarにおいて視聴者から寄せられた両社への質問を、一問一答形式でお届けする。まだ本Ledge.ai Webinarを視聴していないという方は、アーカイブ動画を現在も配信しているので、下記から遷移する申し込みフォームに必要事項を記入して視聴してほしい。
こんな方におすすめ
●配船計画・生産計画・配合計画など計画業務において課題を感じている方
●属人化している現場オペレーションを自動化したい
●計画業務のスピード向上を目指したい
●計画業務の標準化を目指したい
●サプライチェーンに関わるコストを削減したい
●バランスシートを圧縮したい
●サプライチェーンのデジタル化を推進したい
登壇者紹介
出光興産株式会社 流通業務部 企画課
村上 正
出光興産(株)流通業務部は、国内製油所にて精製された燃料油をタンカーによる海上転送とローリーによる陸上転送の連携で全国のお客様にお届けしております。また石油製品を「安全」かつ「安定供給」することを社会的使命として担っている物流部隊です。2018年より最先端技術のAIを活用した配船業務の効率化、油槽所出荷量予測システムに取り組んでおり、両プロジェクトを企画・推進すると共にPMとして従事しています。
株式会社グリッド 代表取締役社長
曽我部 完
2009年にGRID創業。機械学習/深層学習AI開発プラットフォーム「ReNom」を開発・提供。「インフラライフイノベーション」を使命に、サプライチェーン、エネルギー、交通、通信などの社会インフラを中心にAI開発に取り組む。各分野のドメイン知識とAI技術を融合させ社会インフラの様々な課題解決事業を展開する。
Q.出光興産とどういった取り組みをされているのでしょうか?
A.配船計画業務をAIを活用して最適化する取り組みを実施している
出光興産様で行われている配船計画業務である「いつ、どの製品を、どの量、どの港に、どの船で運ぶか」の計画を、AIを活用して最適化する取り組みを行っております。在庫切れを抑制しつつ、輸送効率を20%向上、計画策定時間を1/60短縮を実現しております。
Q.グリッドとの取り組みで不安だった点などはありますか?
A.当初は不安だったけれど、いまでは私事として捉えて参加するメンバーばかり
数ヵ月に及ぶ業務内容の聞き取りフェーズでは、何をどの程度ご理解頂けているのか不安を感じていましたが、打ち合わせを重ねる毎に少しずつアウトプットや逆提案、配船に対する新たな気づきが出てくるようになって、参加者の不安や少なくなってきました。
しかし、業務をある程度、理解して頂いても当初AIが算出した配船計画の完成度はまだ低く、出口のない迷路に迷い込むような感覚に陥ることもございました。ですが、PMである当方の不安はそのままプロジェクトの不安に繋がると思いましたので、基本的には明るく振舞い、あと少し、何か少し改善すれば状況は好転すると信じ諦めない姿勢だけは崩しませんでした。
社内でも段々と協力する雰囲気が出てきたのはその頃からだと思います。コロナ禍ではありますが、今では私事と捉えて参加するメンバーも増えていますので、今後は業務がどの様に変化するのか、新しく生み出せる価値について導き出したいと考えております。
Q.グリッドのソリューション導入後、船の手配について人手はどのくらい、どのあたりの業務が残ると思われていますか?
A.AIによって導き出された解を理解する・選択する業務は残ると考えている
配船業務は刻々と状況が変化する日々のオペレーションの為、唯一絶対の回答が中々導き出せないモノだと考えております。これは他業種のオペレーションでも同様だと思います。
従って、弊社の目指すシステムは唯一絶対の解ではなく、さまざまなKPI軸に対してそれぞれ異なるスコアで算出された複数の解を算出することです。
複数プランの中から人が今後の見通しだけでなく、「突発的な案件」や「折衝要素」も考慮して選択することが必要となります。本システム導入により人が配船する能力を低下させては意味がなく、導き出された解を理解する・選択する業務は残ると考えております。
Q.配船計画において、船や製油所のトラブル、天候など、突発的な事項はどの程度、どのようにシミュレーションに織り込まれるのでしょうか?
A.突発事項は協議して決めているが、気象情報は離散化いて取り込んでいく
シミュレーターにどこまで突発事項を盛り込むかは、プロジェクトの中で協議して決めていきます。ただし、過去のデータを分析して、トラブルが定期的に発生するのであれば、ある程度加味していきます。日々変化する気象情報については突発的な変動とはいえないので、うまく離散化して取り込んでいいきます。
製油所の出荷可能量、油槽所の需要予測、手配可能な船の情報なども入力いたします。入力情報と紐づいているトラブルも即時に反映され、その情報を基に配船計画を瞬時に策定することが可能です。
シミュレーターの構築にはどれくらい時間がかかったのでしょうか?
A.およそ1年
通常要件を2ヵ月程度ヒアリング&整理して、その後3~4ヵ月でベースのシミュレーターを構築します。その後は段階的に改良し、実際には1年程度かかると思って頂ければと。
配船計画において、船や製油所のトラブル、天候など、突発的な事項はどの程度、どのようにシミュレーションに織り込まれるのでしょうか?
A.これらはパラメータ値として付与しているので、パラメータを変更するだけでシミュレーションできる
上記事項はすべてパラメータ値として与えておりますので、パラメータを変更することで加味したシミュレーションをすることが可能となります。
BCP時の配船計画の再立案にも利用可能と考えております。
Q.配船計画策定時にはグリッドの方が会社に常駐してシステムを導入していくイメージでしょうか?
A.導入時のサポートは当然行なうが、お客様自身で計画を立案できるようにしている
本番システム導入後はお客様が業務システムに必要な情報を登録して、計画策定を行ない、AIが計画した配船計画を評価し、それを基幹システム等に連携していきます。導入時のサポートは当然行ないますが、お客様がシステムに慣れた後は、お客様自身で計画を立案頂けるシステムになります。導入後は当社のデータサイエンスが裏側で、AIの性能維持や、細かなメンテナンスなど、計画立案業務を支えて参ります。
Q.日本のみならず世界全体での配船も理論上は可能でしょうか?
A.今後は外航船についてもサポート予定
現在は内航船を対象にしておりますが、現在多くの会社様から外航船の計画のご相談も頂いております。今後は内航船に引き続き、外航船についてもサポートしていくつもりです。
Q.たとえば今年のコロナのような不測の事態が起きた場合にも、計画の最適化は対応できるものなのでしょうか。計画の修正をかけた時点ですぐさま新しい計画を出せるのか、ある程度の時間が必要になるものなのか、お聞きしたいです。
A.事前にそのような使い方を想定しておけば、各地の生産量や、各地の需要の予測値を登録できる
システムの使い方にもよりますが、事前にそのような使い方を想定しておけば、各地の生産量や、各地の需要の予測値を登録する事ができます。また、拠点を使えなくしたり、船舶の数を制限したりするような設定も可能です。従って、コロナによる需要予測、出荷予測の変動も入力できますし、今回のようなCOVIDの時に発生するサプライチェーンのダウンについても、情報を設定する事で、サプライチェーンのBCP対応の検証として使うこともできます。
ただし、このようなサプライチェーン全体の設計に関わる事は長期的なリスクも加味して意思決定が必要な事だと思いますので、当社ではこのシステムを利用してお客様のサプライチェーンを今後どのようにしていけば良いかを、様々なアルゴリズムを使って長期的なリスクを計算し、一緒になって考えていければと思っています。
Ledge.ai Webinar本編はアーカイブ配信でチェック
グリッドと出光興産によるLedge.ai Webinarでは、計画策定が実証実験に至るまでの道のりなどが明かされた。両社が取り組んだのは、石油元売り業界の喫緊の課題であった熟練担当者の経験や職人技に依存した配船計画策定を、AI最適化技術を用いて最適化および自動化を目指すというものだ。
今年6月に発表したプレスリリースでは、過去の実績データとAIによる配船結果を比較検証したところ、安定供給を実現しつつ輸送効率を最大20%程度改善できる配船計画の作成に成功したとしている。くわえて、さらに、計画立案速度も格段に向上し、これまで計画立案に要していた時間のおよそ1/60まで削減できたという。
パネルディスカッションでは、AIを活用した配船計画最適化ソリューションについて、グリッドの曽我部氏は「本当に難しいことをやっていることは事実です。しかし、難しいことを実現することに価値があるとグリッドとしては考えています。従来の配船計画業務について、村上さんに1から10まで教えてもらいつつ、考慮することを一個一個理解し、数式に落とし込んでいました。たとえば、石油がどれだけ積まれると船が何cm沈んでしまうとか、ポンプの径のサイズが変わるとどれだけ石油転送時間が変わるのかなど、挙げるとキリがないほどのことをひとつずつ考慮しています」と話した。
また、出光興産の村上氏は、グリッドとの取り組みについて「最初は実現できるのかが不安でした。ただ、今回の取り組みについてチャレンジし、実施してくれたのがグリッドさんだけでした。実は実施検討段階では社内や関係者からも『無理です。そんな簡単な業務ではない』と言われていたんですよ(笑)。しかし、打ち合わせやヒアリングを重ねていくうちに、グリッドさんの理解力と吸収力の高さから逆に気づかされる点がいくつもあったんです。このようなやり取りを続けた結果、いまのソリューションが形になってきたのだと思います」と語った。
本Ledge.ai Webinarのアーカイブ配信は、すでに多数の方から申し込みがある状況だ。計画策定業務などにおいて、グリッドと出光興産の取り組みに興味をもった方は、ぜひとも下記のフォームから申し込んでほしい。
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引用先はこちら:一問一答:出光興産とグリッドによるAIを活用したサプライチェーンでの計画策定最適化の取り組みの裏側