ドローンが視覚的に障害物を避ける技術でFAA規制の壁を乗り越えるIris Automationが約13.5億円調達
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ドローンが日常の物流インフラの要になるのはいまや時間の問題だが、現時点からそこまで行く間には、まだ大きな障壁が残されている。特に規制の壁は大きい。Iris Automation(アリス・オートメーション)は、無人飛行の標準規格づくりに関連する規制上の難題を解決に導くコンピュータービジョン製品を開発している。そこには、さまざまなカメラに幅広く対応できる障害物を検知して回避する同社の技術が活かされている。このほどIris Automationは、シリーズB投資ラウンドで1300万ドル(約13億5000万円)を調達し、その資金を技術の改良と発展、そして規制当局との協力による効果の実証実験に役立てようとしている。
Iris AutomationのCEOであるJon Damush(ジョン・ダマシュ)氏と、Iris Automationに投資を行っているBessemer Venture Partners(ベサマー・ベンチャー・パートナーズ)副社長Tess Hatch(テス・ハッチ)氏に、今回のラウンドと同スタートアップの今後と目標について話を聞いた。2020年の初めにCEOを引き継いだダマシュ氏は、Boeing(ボーイング)勤務時代の経験、パイロットとしての個人的な体験、そして、商用UAV業界に爆発的成長のステージを整えた小型で安価、かなり入手しやすくなった電動モーター、バッテリー、強力なコンピューターモジュールの出現が航空業界に与えるインパクトに関して語ってくれた。
「航空宇宙の世界に50年間存在していた障壁を、私たちはいくつも打ち破ってきました。以前ではあり得なかったほど簡単に、航空機を作れるようにした製造ツールの真の民主化が始まったからです」とダマシュ氏はいう。「そうした状況から、また人をコクピットに乗せずに飛ばせるようになったことから、課題がいくつも生まれています。中でも、規制環境の問題です」。
米連邦航空局(FAA)も、世界中のほとんどの航空宇宙規制当局も、商用飛行に関する規制を基本的に2つの大きなくくりに分けているとダマシュ氏は説明する。1つは操縦、つまり飛行中に行う即時的な行為に関するもの。もう1つはパイロットに関するものだが、これを無人航空機に適用しようとすると、非常に厄介なことが起きる。
「最大の課題の1つは、91.113bと呼ばれる規制に関するものです。そこには、許された気象条件では、航空機に搭乗しているパイロットが他の航空機を目視し回避する全責任を負うという条文があります。これは3マイル離れろ、5マイル離れろ、1マイル離れろといった分離標準とは違います。パイロットは最後の砦であり、セイフティーネットなのです。安全な飛行のための危険緩和策がほぼすべて失敗したとき、他の誰かとぶつからないためにパイロットが乗っているということです」。
そこでIrisの出番だ。光学カメラをベースにした障害物回避システムで、パイロットが乗っていない航空機の最後の砦の役割を実質的に代行する。そしてこれが、現在の商用ドローン規制環境における最大の制限因子、つまり人間の目視を越えて航空機を飛行させる能力を実現する。障害物回避システムにより、オペレーターが常時目で観察していなくてもドローンを運用できることを意味する。一聴すると、この制約因子は長距離飛行に関わるものであるかに聞こえるかもしれないが、実際にはむしろボリュームの問題だとダマシュ氏は指摘する。常に人間の目視の範囲内でドローンを飛ばさなければならないという制約を取っ払えば、ドローン1機にオペレーター1人という体制から、何機ものドローンを1人のオペレーターが運用する体制に移行できる。そうして初めて、商用ドローン運送の規模の経済が実際に意味を持ってくる。
Irisは、2020年に総合パイロットプログラムの一環としてFAAに協力し、2つの異なる使用事例のデモンストレーションを行い、それを実現へ近づけた。また同社は、Casia(カシア)システムの2つめのバージョンを発表した。これは、非常に離れたところにあるオブジェクトの検知能力を持つ。ハッチ氏は、この2つが、追加投資でさらに出資を増やすBessemerの判断要因になったと指摘する。また、業界の需要や商用ドローン市場への信頼が、新型コロナウイルスに何らかの影響を受けたかを尋ねた。すると、それは特筆すべき重要因子であり、この業界の本質がそれによって変化し始めていると彼女は答えている。
「現在、最も大きな産業は農業と公安の2つです」とハッチ氏は私に話した。「公安は去年、上位に入っておらず、入っていたのは農業、建設、エネルギーでした。ドローン業界におて、公安は確実に重要な垂直市場になっています。誰かが心臓発作やアレルギー発作を起こしたときのことを想像してみてください。救急車が来るまでに平均で14分かかります。ドローンなら、数分でその人にAEDやエピペンを届けることができ、命を救えます。新型コロナの収束後も、この追い風が続くことを切に願っています」。
今回のシリーズB投資ラウンドには、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、OCA Ventures(OCAベンチャーズ)、そして新規の戦略的パートナーとしてSony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)とVerizon Ventures(ベライゾン・ベンチャーズ)が参加している(自己開示情報。TechCrunchはVerizon Media Groupの子会社だが、その投資部門とは直接、間接いずれの関与も受けていない)。ダマシュ氏は、ソニーは大変に有望な戦略的価値をもたらしたと話す。なぜならソニーは、ドローン業界で利用されているイメージセンサーの膨大なスタックを開発しており、ドローンそのものも開発しているからだ。その一部として、Verizonも大規模なドローン運用の際に欠かせないネットワーク接続の分野で、重要なパートナーとしての可能性を提供している。
カテゴリー:ドローン
タグ:Iris Automation、FAA、資金調達
画像クレジット:Iris Automation
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(翻訳:金井哲夫)
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