最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテストの結果発表
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日本IBMは、11月9日から11月30日までの3週間にわたり開催した、量子コンピューターの競技型プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」(The Quantum Challenge Fall 2020)の結果を発表した。東京大学工学部物理工学科の長吉博成氏が、全問クリアに加えて、最後の問題を解く際に最も低い量子コストを達成し最優秀者となった。
同コンテストは、参加枠2000名限定に対し、85ヵ国から3320人以上の応募があったという。最も申し込みが多かった国はインドで、日本は2番目だった。また男性は75%で、女性は25%という比率だった。
コンテスト参加者は、毎週難易度が上がる形で新しい課題を与えられ、2000名の参加者のうち、第1週目の演習課題をすべて解けた者は1091名、第2週目が576名だった。最後の最も難しい本戦課題を含め、すべての演習課題を正解できた者は227名だった。
優勝者の長吉氏は、問題の制約条件のユニークな特徴を利用した戦略を適用することで、最も少ない量子コストで解を得ることに成功した。
最終週の本戦問題については、問題作成者のIBM Quantumの松尾篤史氏が執筆した解答例、長吉氏の解法と解説のどちらも、Github上で公開されている。さらに、トップチームの解法解説も掲載されており、アプローチや駆使したテクニックを学べる。
コンテストの内容は、qRAM(量子ランダムアクセスメモリー)を使って近未来の量子データ構造を実装し、データベース探索を行うGrover(グローバー)のアルゴリズムを使って量子ゲームソルバーを設計する方法を学ぶというもの。qRAMとGroverのアルゴリズムの組み合わせは、将来の量子システムを使った量子機械学習や複雑な意思決定問題の分野で、実生活の問題を解決するために数多くの応用が見込まれている。
参加者のスコアは、「コスト=S+10C」という式に基づいて、回路の実装コストを測定することで決定。
(Sは1量子ビットゲートの数、CはCNOT(CX)ゲートの数で)任意の量子回路は、1量子ビットゲートと2量子ビットゲートに分解できる。現在の誤り(エラー)耐性のないNISQ(ニスク。Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイスでは、CNOTのエラーレートは、一般的に1量子ビットゲートのものと比較して10倍となる。そのため、回路の実装コストを評価するために、CNOTゲートを1量子ビットゲートの10倍に設定。今回のチャレンジでは少ないゲートコストで正解にたどり着くことがゴールとなっている。
日本IBMによると、今回のコンテストの大きな成果は、量子コンピューティングと、量子コンピューター向けPython用フレームワーク「Qiskit」に関する知識とスキルレベルの向上といった学習体験にあるという。参加者の事前と事後アンケートの結果を比較したところ、より高いレベルの経験とスキルを身につけた様子がうかがえるとした。
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