インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復
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新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックやその他いくつかの要因により、2020年はインドのスタートアップの投資契約がスローダウンした。
2019年の記録的な145億ドル(約1兆6000億円)の資金調達と比較して、インドのスタートアップは合計調達約93億ドル(約9660億円)で2020年を終えようとしている。コンサルティング会社Tracxnによると、世界最大級のスタートアップコミュニティであるインドのスタートアップが1年間に100億ドル(約1兆400万円)未満の資金調達を行ったのは、2016年以来初めてのことだという。
案件数は2019年の1185件から2020年には1088件に減少した。より大きなサイズの資金調達ラウンドも減った。1億ドル(約104億円)以上のサイズの資金調達ラウンドは2019年の26件から20件に減少し(これらのラウンドは昨年の75億ドル(約7800億円)に対し、今年は36億ドル(約3700億円)を調達した)、同様に5000万ドル〜1億ドル(約52億円〜104億円)のディールサイズのラウンドは27件から13件に減少した。この数字には、今年だけで200億ドル(約2兆770億円)以上を調達した通信大手のJio Platformsへの投資は含まれていない。
景気減速にもかかわらず、インドのスタートアップは2020年の下半期に大幅な回復を経験した。Tracxn社によると、世界第2位のインターネット市場であるインドのスタートアップは、上半期に約461件の契約からわずか42億ドル(約4362億円)の資金調達を行ったという。
世界中のスタートアップに影響を与えた新型コロナウイルス以外にも、投資に影響を与えたもう1つの要因は、大手投資家の一部が参加していなかったこと、または参加が減ったことだ。
中国の巨大企業Alibaba(アリババ)や、その関連会社Ant Group、そしてTencent(テンセント)などは、中印間の緊張の中で、今年はインドのスタートアップへ小切手を切ることが減った。そしてソフトバンクも、Paytm、Oyo Rooms、Olaなどの知名度が高いポートフォリオ企業の多くが資金調達をしなかったため、出資が少なくなった。
しかし、ウイルスは一部のスタートアップの成長を加速もさせた。EdTech企業Byju’sの評価額は、2020年1月の80億ドル(約8310億円)から(未訳記事)増え110億ドル(約1兆1425億)を超えた。オンライン学習分野で注目を集めているもう1つのスタートアップUnacademyは、パンデミックが最も激しかった時期に2回の資金調達を行い(未訳記事)、今年2月には約5億ドル(約519億円)だった評価額を20億ドル(約2077億円)以上に引き上げた。
Mary Meeker(メアリー・ミーカー)氏ら注目度の高い投資家が立ち上げたベンチャーキャピタルファンドのBondは2020年、Byju’sに投資している(未訳記事)。Bond社の概要を把握している人物がTechCrunchに語ったところによると、同社は3年後には、Byju’sの評価額は300億ドル(約3兆1000億円)を超えると考えているという。インドではSaaSモデルで運営され(未訳記事)、世界中の顧客にサービスを提供しているいくつかのスタートアップも2020年は勢いを増している(未訳記事)。
RazorPay、Unacademy、DailyHunt、Glanceなど11社のインドのスタートアップが今年はユニコーン企業になった(余談だが、GoogleとFacebookは2020年、インド企業にいくつか小切手を書いている。Googleは先にGlanceとDailyHuntを支援し、FacebookはUnacademyに投資した。両社とも今年はJio Platformsにも投資している)。
Better Capitalの創業者兼専務理事であるVaibhav Domkundwar(ヴァイブ・ドムクンドワール)氏はこう語る。「私は(残念ながら!)2001年と2008年の不況を見てきた年齢なので、新型コロナウイルスが押し寄せて来て、あちこちで破滅的で陰気な話ばかりだったとき、過去の不況の際に何が起きていたかを思い出しました。それは次世代の企業を構築する、新世代のチームの始まりでした」。インドでアーリーステージのスタートアップを支援するBetter Capitalは、2020年に43件の投資とフォローオン投資をしている。
今年はM&Aも加速した。Byju’sはWhiteHat Jrを3億ドル(約311億4000万円)で買収し(未訳記事)、Unacademyは7月に医学生向けの講座を提供するPrepLadderを5000万ドル(約51億9000万円)で買収した(未訳記事)。また、同社は500万ドル(約5億2000万円)の投資ラウンドを主導してMastreeの過半数の株式を取得した。
Reliance Industriesは、オンライン薬局のNedmedsを買収したほか、破格の値段でUrban Ladderを買収した。
インドのスタートアップはここにきて、異なる種類の出口も見えてきた。2021年の株式公開を計画しているスタートアップの中にはZomato、Flipkart、Policybazaarなどが含まれている。Bernsteinのアナリストは2022年までに株式を公開する可能性のある企業の中にPaytm、Byju’s、PhonePe、Delhiveryを挙げている。
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カテゴリー:その他
タグ:インド、資金調達
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(翻訳:Nakazato)
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