急成長の波に乗るインドの電子機器&ライフスタイル製品ブランドのboAtが約103億円の資金調達
AI.
インドの電子機器とライフスタイル製品のスタートアップ企業であるboAt(ボート)は、世界第2位のインターネット市場でこれまで最も成功したハードウェアのスタートアップ企業であると、多くの独立系投資家から評され、最近の資金調達ラウンドで1億ドル(約103億円)を調達した。
ニューヨークに本社を置くプライベートエクイティ会社のWarburg Pincusの子会社が、インドのboAtにシリーズBラウンド全体で資金提供を行った。同社は低価格で耐久性の高いヘッドフォン、イヤフォン、その他のモバイルアクセサリーを販売する創立4年のスタートアップ企業だ。
このラウンドの前に、エクイティ(株式資本)とデット(負債)で約300万ドル(約3億800万円)の
の資金調達を行っていたboAtは、新たな資金調達後の評価額が約3億ドル(約308億円)になったと、この件に詳しい関係者はTechCrunchに語った。boAtの幹部はWarburg Pincusが同社の「少数だが無視できない数の株」を購入したこと以外、評価額についてコメントを避けた。
ある匿名の投資家は、インドのハードウェアスタートアップ企業の中でもboAtは特異なケースに成長していると語った。そもそもインドには、ハードウェアのスタートアップ企業は多くない。それらの中でも、多くの資金を調達できたものはほとんどない。厳密には、スマートフォン販売のMicromax(マイクロマックス)やLava International(ラバ・インターナショナル)をハードウェアのスタートアップとして見ることもできると思うが、両社とも1億ドルの資金を調達していない。boAtはさらに希有なマイルストーンを達成したことで、さらに興味深い存在になった。それは収益性であると、同社の共同創業者であるSameer Mehta(サミーア・メータ)氏はTechCrunchのインタビューで語った。
boAtの秘密は、少なくとも部分的には、アクセサリーの価格を低く抑えつつ、美的にも魅力的な製品に仕上げていることだ。低価格で見栄えの良いアクセサリーを求め、しかも数カ月ごとにアップグレードする傾向のある若い世代を、このスタートアップ企業はターゲットにしている。
今回の資金調達ラウンド前にはFireside Venturesしか機関投資家がいなかったboAtが成功しているもう1つの理由としては、登場した時期が適切だったということが考えられる。このスタートアップ企業の歴史は、充電ケーブルと電源アダプターの販売からスタートした。その始まりは、毎月何百万人もの人々が端末を購入するようになったインドのスマートフォン市場が転機を迎える時期と重なったのだ。
同社の創業から数カ月後、インドで最も裕福な人物Mukesh Ambani(ムケシュ・アンバーニ)氏は、通信ネットワーク「Reliance Jio(リライアンス・ジオ)」を起ち上げ、インドのスマートフォン市場をさらに加速させた。4Gデータ通信を数カ月間無料で提供することで、いきなり同国内の数千万人の人々に、スマートフォンにアップグレードする理由を与えたのだ。
boAtはこの数年間でいくつかのカテゴリーに進出し、最初に注目を浴びた時と同じ戦略を踏襲している。同社のフィットネスウェアラブルの価格は1799インドルピー(約2530円)から。スマートウォッチは2499インドルピー(約3510円)、充電ケーブルは249インドルピー(約350円)、ホームシアター用サウンドバーは3999インドルピー(約5620円)、ワイヤレススピーカーは999インドルピー(約1400円)、ヘッドフォンは399インドルピー(約560円)、AirPodのようなワイヤレスイヤフォンは1999インドルピー(約2810円)からとなっている。
マーケティングリサーチ会社IDCによると、boAtはインドのウェアラブル市場で30%以上を占めており、このカテゴリーでは世界第5位のブランドになっているという。
2020年3月までの会計年度に9500万ドル(約97億5000万円)以上の収益を計上し、2021年の会計年度ではその倍増が見込まれているこのスタートアップ企業は、オンラインとオフラインの両方の小売チャネルを介してその製品を販売している。同社のデバイスは、Flipkart(フリップカート)、Amazon India(アマゾン・インディア)、Reliance Retail(リライアンスリテール)だけでなく、Tata Cliq(タタ・クリク)、Croma(コロマ)、Vijay Sales(ヴィジャイセールス)でも販売されている。HDFC銀行のアナリストは2020年12月の報告書で、boAt Lifestyleの製品はインド全土の5000以上の小売店で購入でき、グローバル市場への参入を計画していると推測している。これは新型コロナウイルス(COVID-19)の流行がなければ、もっと早く実現していただろう。
Warburg Pincus Indiaのトップで取締役社長を務めるVishal Mahadevia(ヴィシャール・マハデビア)氏は、声明で次のように述べている。「boAtの成長ストーリーには説得力があると我々は見ており、同社は業界で切り開いてきた強力なリーダーとしての地位を基盤に、インドにおける電子商取引の成長という現世的な追い風から恩恵を受ける準備が整っていると考えています。Warburg Pincusは、アマンとサミーアの2人が率いるboAtの経営陣とパートナーを組むことに興奮しており、会社が成長する次の段階に向けて彼らをサポートできることを楽しみにしています」。
創業者のサミーア・メータ氏によると、boAtは製品のマーケティング方法でも幸運に恵まれたという。同社は伝統的な広告の手法に従うのではなく、何人かの若いトップセレブリティやクリケット選手と、boAt製品を宣伝してもらうための契約を結んだ。同社がごく初期の頃から関わってきた人物、たとえばクリケット選手のHardik Pandya(ハーディク・パンディヤ)氏(トップ画像)などが、この数年間でより成功を収めていることもその助けとなった。
現在のところ、boAtのライバルとなる企業は明確になっていない。確かに、アクセサリー事業を拡大しているXiaomi(シャオミ)やRealme(リアルミー)などのスマートフォンベンダーは脅威となっている。CromaやFlipkart、アマゾンなどの小売業者も、近年は自社のプライベートブランドを拡大してイヤホンなどのモバイルアクセサリーを発売している。メータ氏は、boAtが事業を展開する市場はまだゼロサムゲームではないことを示唆し、「誰もが同時に成長しています」と語った。
boAtではないD2Cブランドをインドでいくつか支援している投資家は、boAtの顧客の多くがAmazon Basics製品の購入を検討する可能性があるのは事実だと語りながらも、Amazon Basics製品は必ずしも満足感の高いものではないことに注意を促した。「人々がboAtを購入するのは、その製品がプレミアム感を持っているからです」と彼はいう。
また、別の投資家は、インドでは他の市場と異なり、アマゾンはまだAmazon Basicsを広く展開していないため、Amazon Basicsの商品が同国ではそれほど積極的な価格設定にはなっていないことも付け加えた。
boAtは新たに得た資本を投入して製造を中国からインドに移し、ゲーミングキーボードやマウスなど、より多くのカテゴリーに拡大する予定だと、メータ氏は語っている。
カテゴリー:ハードウェア
タグ:boAt、インド、資金調達
画像クレジット:boAt Lifestyle
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(翻訳:TechCrunch Japan)
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