暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.7.5~11)
AI.
ブロックチェーンは幻滅期から脱し、2021年頃啓蒙活動期に到達か
米国に本社を置く調査会社のガートナーが独自に提唱する新技術の成熟度、採用度、社会への適用度などを示す指針ハイプ・サイクルにおいて、ブロックチェーン技術は現在「幻滅期」にある(ブロックチェーン・テクノロジのハイプ・サイクル:2019年)。幻滅期というワードは技術の衰退を感じさせる印象に聞こえるが、これは技術に対する評価ではなく、単に世間の関心が薄れつつある状況を指すものだ。
ハイプ・サイクルは、新技術に対して時間経過とともに変化する市場からの期待度を2次元の波形曲線で表す。新技術が市場に受け入れられる過程は、総じてこの曲線のような経過をたどるという。その経過は、「黎明期」「流行期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産性の安定期」の5段階に分けられる。
市場に初登場した技術は、世間の関心・期待度が一気に高まる「黎明期」を経て、注目されることでメディアなどに過熱気味にもてはやされる「流行期」を迎える。しかし、技術が実用化されるまでに時間がかかることから、技術は世間の期待に応えられずに世の関心は薄れ、話題に挙がることも少なくなる「幻滅期」を迎える。ガートナーの分析では、ブロックチェーンは、今ここである。
幻滅期を迎えた技術は、その後いくつかの成功事例を示すことができた事業により市場浸透が始まり、「啓蒙活動期」に到達する。そして技術は市場に完全に認知される「生産性の安定期」をたどり、成熟した技術に至る。
ガートナーは、ブロックチェーンが幻滅期から啓蒙活動期に到達するのは2021年頃と分析している。2021年までに幻滅期を脱し始め、市場に浸透していくという。つまり、ブロックチェーン技術は今こそが市場浸透が始まる成功事例の多くが登場する機会を迎えているといえる。
そこで、ブロックチェーン技術が世に浸透していくさまをわかりやすく解説しお届けしたいという趣旨から、今週より暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから重要かつこれはという話題をピックアップし、1週間分の最新情報をまとめていきたい。ブロックチェーン技術のさらなる発展を共有していく。
コイネージが暗号資産交換業の登録を完了、マネーパートナーズの決済関連サービス動向に注目
金融庁は7月7日、「コイネージ」を資金決済法に基づく暗号資産(仮想通貨)交換業の登録業者に認定した(関東財務局長 第00021号)。これで、国内における金融庁認定の暗号資産交換業者は全24社となった。
マネーパートナーズグループの完全子会社のコイネージは、暗号資産交換業登録に向けて準備を進めてきた。同グループは、すでに「マネーパートナーズ」にて暗号資産交換業の登録を受けている(関東財務局長 第00001号)。マネーパートナーズは、複数通貨対応プリペイドカード「マネパカード」との連携などによる暗号資産の決済関連サービス提供の実現に向けて取り組んでいるものの、昨今のマネーロンダリング対策強化の流れの中、マネーパートナーズの取引先である金融機関などには暗号資産の取扱いは高リスクであるとして暗号資産交換業者との取引を避ける傾向が見られた。このことから、現段階での暗号資産関連サービスの提供は、同社の暗号資産事業以外の既存サービスへの悪影響が懸念されることからサービス提供に至っていない。
そこで同グループは、子会社のコイネージが暗号資産交換業の登録を予定通り完了できたあかつきには、コイネージが暗号資産取引所を、マネーパートナーズが決済関連サービスを担う計画を公表していた。暗号資産は投資・投機的なものとして見られがちだが、新規暗号資産交換業者が増えることで、決済関連サービスをはじめ暗号資産に関し新たな展開が生まれる可能性は高まるだろう。
デジタル通貨やブロックチェーン技術の生命保険業への応用可能性を検証、インシュアテック(InsurTech)の実証実験
暗号資産取引所「DeCurret」を運営するディーカレットは7日、T&D保険グループの大同生命保険(以下、大同生命)と協働でデジタル通貨に関する実証実験を開始を発表した。
大同生命は、ディーカレットが構築する「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を用いて自社ブランドデジタル通貨を発行し、実証実験参加者(大同生命役職員、100名程度)に限定した仮想経済圏を構築する。実験参加者はスマートフォンアプリでデジタル通貨を保有し、物品購入や、送金・決済など取引に伴う様々な処理を自動化する仕組み「スマートコントラクト」を応用した自動積立などを行う。実験では、デジタル通貨やブロックチェーン技術の生命保険業への応用可能性を検証していく。
具体的には、物品購入や、日々の歩数など健康活動の成果に基づく自動積立のほか、募金とりまとめ者による集金など社会貢献活動にも活用するという。発行するデジタル通貨の有効期間は、2020年7月から8月の約2ヵ月間としている。
まだ実証実験段階ではあるものの、「保険分野におけるFinTech」と定義される保険(Insurance)×テクノロジー「インシュアテック(InsurTech)」分野の実証が行われることになり、より実用面における課題の解決が見込まれる。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)がステーブルコイン部会を発足し、法的分類や論点の共有、検討課題を議論
一般社団法人「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」は7月8日、同協会内にてステーブルコイン部会を発足した。同部会は、暗号資産交換業者、金融機関、ブロックチェーン事業者、ウォレット業者といった暗号資産関連ビジネス業者、弁護士法人、税理士法人、監査法人など39社の会員企業が参加し、ステーブルコインの法的分類や論点の共有、検討すべき課題について議論を行った。
ステーブルコインは、日本円や米ドルなど法定通貨の価値にペッグ(連動)する暗号資産の一種。その技術的背景や、裏付けとなる資産に連動し価格が安定しているといった特徴があり、デジタル決済手段として利用される可能性を備えている。しかし、その定義は明確になっておらず、国内において取り扱いが難しいとされている。
そこで同部会は、ステーブルコインの法的整理や資産性の判断といった業務的観点、価格安定のメカニズムに対する信頼の観点、利用者保護、AML/CFT(マネーロンダリング/テロ資金供与対策)といった様々な観点から議論を進め、暗号資産関連事業者のビジネス環境整備を図る。
JCBAは、銀行・証券会社・金融商品取引業者が日本国内において暗号資産ビジネスを開始するにあたり、テクノロジー・会計・レギュレーション(規制)・商慣行などの面から、必要な情報の調査・研究、知見の集約、意見交換を積極的に行うなど、業界の健全な発展を目指すために設立された業界団体である。業界団体による新部会の発足は、取り扱いが難しいステーブルコインの実用化への兆しが見えてきたといえるのではないだろうか。
ネットラーニングがデジタル修了証明書「オープンバッジ」発行開始
eラーニング業界大手のネットラーニングは7月9日、同社提供のeラーニングコースの受講者向けに、デジタル修了証明書「オープンバッジ(Open Badge)」の発行サービスを開始した。
なおネットラーニングは2020年5月、同社提供のLMS(ラーニング・マネージメント・システム)が、世界で初めてオープンバッジの全機能を装備するLMSとしてIMS Globalが規定・認定するバッジの発行資格を取得している。
オープンバッジは、2020年7月現在22ヵ国約570組織が加盟するIMS Global Learning Consortium(IMS Global)が定める国際技術標準規格。ブロックチェーン技術を応用し、改ざんや偽造を不可能とし、信頼性が高く、インターネット上でいつでもその内容を証明できるデジタル修了証明となっている。
オープンバッジ規格の技術的な仕様などについてはGitHub上で管理されているほか、運用のためのBadgrサーバーは、GNU Affero General Public License v3.0(AGPL)のもとオープンソースソフトウェアとして公開されている。
元々は、米慈善基金団体マッカーサー基金の支援のもと、Mozilla Foundationが「Mozilla Open Badges」として2011年に発表・2012年公開していたもので、2016年10月にIMS Globalに移管された。
オープンバッジには、学習者が取得した資格や修了証明書とその発行機関情報、受講コースやプログラム名、学習者氏名などの情報がブロックチェーンにより記録される。SNSでの共有やメールでの送信が行え、取得資格や学習内容をグローバルな環境で見える化させることが可能になる。また、企業など採用側はSNSなどインターネット上で資格取得者を見つけ出すなど、雇用流通市場にも大きな影響をもたらす利用方法が考えられる。
ネットラーニングは、ネットラーニング情報技術シリーズ「C言語プログラミング」「Eclipseで学ぶ!実務 C言語プログラミング」「【Java SE 8 対応】 Java プログラミング」「Python プログラミング」など9コースでオープンバッジを発行する。これにより、受講者の自律的・自発的な学習を促進し、90%の修了率を誇るネットラーニングの講座修了率をさらに押し上げる狙いだ。
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