まったく新しい手法で新薬開発を進めるInsitro、「デジタル生物学は素晴らしい分野」と創業者が力説
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「生物学とコンピューティングが交わるところでの研究開発は、テクノロジストにとっていま最もエキサイティングな領域かもしれません」。
Insitro(インシトロ)の創業者兼CEOのDaphne Koller(ダフニー・コラー)氏はそう語る。このバイオテック企業は、立ち上げからわずか2年で2億4300万ドル(約254億円)余りの資金を調達した。
TechCrunch取材のバーチャルカンファレンスであるDisrupt 2020で講演したコラー氏は連続起業家でもあり、以前は教育系スタートアップのCoursera(コーセラ)を共同創業し、Alphabetの子会社で健康と長寿にフォーカスしたCalico(カリコ)のチーフ・コンピューティング・オフィサー(CCO)を短期間務め、「現在ではデジタル生物学が次の大きな技術革新だ」同氏は見ている。
インタビューでコラー氏は「今現在デジタル生物学は最高に素晴らしい分野だ」と述べた。確かにそれは、同氏にとってまたとない好機だ。現在の同氏の仕事は、神経疾患が疑われる症状の治療法の開発や、Gilead Pharmaceuticals(ギリアド製薬)と共同で進めている肝炎関連の短期的な研究開発事業など多岐にわたっている。
コラー氏の企業のInsitroという名前は、生物学の研究における2つの相異なる方法を組み合わせている。1つは「in vitro」で、これは試験管の中でという意味だ。生体の上ではなく生きた標本を研究室の中で実験観察し研究する。そしてもう1つの「silico」はシリコンに由来し、文字どおりコンピューターの上で実験やシミュレーションなど実行する。
Insitroは、この2つの研究手法を組み合わせて、新薬発見の方法を根本的に変え、大量のデータをふるいにかけることによって、一定の条件の現れの中にパターンを探す。パターンが認められたら、その現れに結びついている経路や機構を調べ、治療のターゲットを判定する。そして、病状の進行を逆転または停止するために使える新しい分子の開発を追究し、病状の進行に結びついている生物学的な機構の停止を目指す。
コラー氏は「弊社には人間の疾患と関係のある大量のデータがあります。機械学習は、データの意味を理解するための多くのツールを私たちに与えました」と語る。
同社は、それらの条件の現れを変えるかもしれない新たな患者集団や新たなインターベンション(カテーテルを血管に挿入して行う治療法の総称)、新たな薬を同定できる。「私たちは機械学習の利用という非常に長い旅の最初の段階にいると自覚しています」とコラー氏。
ギリアドと共同で進めている肝炎に関する研究では、コラー氏のチームがギリアドの試験から小さくて高品質なデータ集合を取得し、患者データの時系列を見ながら病気の進行を分析する。進行を見ることによって同社は、組織の損傷を起こす繊維症の進行の直接の原因を突き止める。そして同社はそれらのターゲットを始点として、疾患の進行を遅らせるための因子を見つける。
「同社が研究しているのは、コンピューターを使って生物学と、シャーレの中でその生物学を形にするバイオテクノロジーと、そのさまざまな形から違いを作り出すインターベンションを理解することなのです」と同氏。
コラー氏は「いま私たちが進めようとしていることは、これまでの製薬企業のやり方とまったく違いますし、似てもいないものです。弊社は何十万もの人たちが働いているこれらの企業の軌道を変え、その文化をいま真の挑戦になりつつあるテクノロジーの文化に変えようとしているのです」と説明する。
同氏が大手製薬企業に入らずに自分の企業を立ち上げたのもこの目的のためであり、それは革新者のジレンマの古典的な例でもある。そして、Insitroのようなテクノロジーの破壊的パワーは、Disruptカンファレンスの命名者であるClayton Christensen(クレイトン・クリステンセン)氏の理論でもある。
「革新者のジレンマとともに重要なのは、これまでとはまったく違ったやり方でやるという心構えです。新薬発見はますます高コストで、失敗の多い事業になりつつあるので、まったく違うやり方のほうがよい結果が得られる可能性があります」とコラー氏は締めくくった。
画像クレジット:Insitro
[原文へ](翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)
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