松尾豊さん「AIのチャンスを掴めるのは若者だけ」
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画像はDCON2020時の囲み取材より
日本ディープラーニング協会(JDLA)は8月22日、「第1回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2020(DCON2020)」本選を開催した。
その際に、東京大学大学院工学系研究科 教授で、JDLA理事長および本イベントの実行委員長も務める松尾豊さんにお話を聞く機会を得た。
改めて紹介するまでもないが、松尾豊さんは『人工知能は人間を超えるか』(KADOKAWA)などの著書でも知られる、人工知能(AI)研究の第一人者だ。今回はそんな松尾豊さんへのインタビュー内容をお届けする。
なお、DCON2020のイベントレポートは『松尾豊さん「『国がAIをやります』と言っても意味がない」DCON2020レポ』をチェックしてほしい。
「AIのチャンスを掴めるのは若者だけ」
「今後のAI社会を踏まえて、若者に期待することは何か?」聞くと、松尾豊さんは「若者は自分たちの持つ可能性に気づいていない」と切り出した。
──松尾豊さん
「若者は自分たちの持つ可能性に気づいていないと思います。日本全体が高齢化しているなかで、固定観念に囚われているところがあります。
しかし、ITやAI技術を使いこなせるのは若者しかいません。(IT/AI技術は)ハードと組み合わせることで、非常に大きなチャンスがあります。チャンスを担えるのは、今回の(DCON2020に参加した)高専生のように若い人しかいません。
(若者には)可能性に対してもっと自覚的になってほしいです。自覚的になって、どんどん自分のやりたいことをもっと広げていくことが、日本全体にとっても経済成長に繋がると思います」
「『技術がすごい』が価値に紐付いていない」
「若者たちがそのように自覚するためには、大人が『このような技術がある』ということを教えていくことや、企業が技術の実用化を推し進めることが重要になるのか?」と聞くと、「『技術がすごい』ことがどのくらいの価値を持つのかに紐付いていない」と主張する。
──松尾豊さん
「そのとおりですが、若者に『技術がすごい』という実感がないことが1番の問題です。たとえば、高専生は高専ロボコンなどに参加し、そのなかで順位がつきます。しかし、『技術がすごい』ことがどのくらいの価値を持つのかに紐付いていません。『すごいね』ということで終わりです。
DCONの場合は、(参加者の作品が企業評価額や投資額といった)円に換算されることで、自分たちが持っている技術はすごいと言われてきていたけれども、『5億円の価値があるのか』というふうに実感できるのが1つ大事なことです。
今は評価額なので、実際に会社を作って実現して、さらにバリュエーションを高めていかなければいけません。しかし、自分たちの先輩がやって成功しているとなると、もっと実感もって自分もできるんだと思えるはずです。そういったことの積み重ねが重要かなと思います」
「SDGsを考慮しない企業は生き残れない」
次に、「今回のDCON2020において、とくに印象に残っている作品はあるか?」と聞くと、優勝チームである東京工業高等専門学校のプロコンゼミ点字研究会による「ディープラーニングを用いた高速魚種選別システム」を挙げ、SDGsについて言及している。
──松尾豊さん
「上位3チームは本当に僅差で、非常にレベルが高かったです。(沖縄工業高等専門学校のFish learning 2.0による)『ディープラーニングを用いた美ら海の環境保護プロジェクト』もあのままでも売り物になると思いますし、(佐世保工業高等専門学校の佐世保高専魚市場チームによる)『ディープラーニングを用いた高速魚種選別システム』も製品できると思います。
1番印象的なのは、やはり優勝した(東京工業高等専門学校のプロコンゼミ点字研究会による)『doc(てんどっく)-自動点字相互翻訳システム-』です。技術レベルも高いんですが、やはり、今の時代SDGs(持続可能な開発目標)を背景にして、環境や情報のアクセシビリティに配慮したものに、世界のお金が集まらざるを得ないという流れになってきています。
『それを考慮していない企業は生き残れない』という大きな流れのなかで、すごく良いところをついているなと思いました。プレゼンのなかでも主張されていましたが、合理的配慮というレベルがあがると、自分たちが勝つという今回のシナリオの作り方は秀逸でした」
なお、優勝した『doc(てんどっく)-自動点字相互翻訳システム-』の詳細は『松尾豊さん「『国がAIをやります』と言っても意味がない」DCON2020レポ』をチェックしてほしい。
「コロナ禍のような動乱の時代はチャンスが多い」
最後に、DCON2020からは少し離れるが、「このイベントもオンラインで開催されたが、コロナ禍をどう見ているのか?」質問すると、「起業家にとっては、動乱の時代ほうがチャンスが多い」と語る。
──松尾豊さん
「(DCON2020の参加者たちは)コロナで作業がしにくくなった面はもちろんありました。しかし、日本全体でいうと、オンライン化・デジタル化、AI化を含めて長期で起こる変化がかなり急速に起きていると思います。そういう意味では、良い面も多いと思います。
起業家にとっては、やっぱり動乱の時代ほうがチャンスが多いです。完成していると、やりようがありません。こういうふうに『変化が起きて、いろんなことが起こり得る』という時代は、起業家にとってはウェルカムなんじゃないかと思います」
引用先はこちら:松尾豊さん「AIのチャンスを掴めるのは若者だけ」