電動船外機の性能を向上させるPure Watercraftが約24億円調達
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電気自動車が実用化され始めたのは10年ほど前のことだが、いまではこの技術が水上で展開される準備が整ったようだ。Pure Watercraftは、50馬力程度までのボートのニーズにおいて通常のガスエンジンから電動船外機に置き換えたいと考えている。同社は2340万ドル(約24億6700万円)を調達したばかりだ。
同社の船外機は従来のものとほぼ同じように機能し、スーツケースサイズのバッテリーパックで稼働する。もちろん乱流の音以外はとても静かだ。釣りや湖の周遊に適した3〜6mのボートに使用される船外機の代替となり得るものが、価格に関しては少し違う。
創設者でCEOのAndy Rebele(アンディ・レベレ)氏が同社を創業したのは2011年のことだが、当時はまだ時が熟していなかったのだろう。「モデルSはまだリリースされておらず、ボートを電気式にする計画は事実上資金調達が難しい状況でした」と同氏は語る。
レベレ氏は2016年に自分の資金の投入と控えめな資金調達を実施しているが「当時は腹を決めて成功を信じるしかなかった」と振り返る。
「この小さな市場が拡大していくと信じるしかありません」と同氏は続ける。「私たちはバッテリーパックのアーキテクチャー全体を開発しましたが、現時点で数百万ドル(約数億円)を投じています。しかし、私たちの投資家は、自動車やトラックほど注目されていない全く新しい運輸セクターの電化リーダーに投資してくれているのです」。
彼らは時間を無駄にしていない。同社によると、エネルギー密度(1kgあたりの電力量)は166Wh/kg(ワット時/キログラム)で、業界のリーダーであるTesla(テスラ)に匹敵し、他の多くの自動車用バッテリーメーカーを凌いでいるという。ユーザーは簡単にセカンドパックを追加したり、新しいパックに交換したりすることもできる。セル自体はテスラをはじめとする多くの企業と同様パナソニックが供給元となっているが、効率的で堅牢なものに組み立てることが可能で、防水パックは競合他社よりも優れている。
ボートは水の絶え間ない抵抗に対抗するために大量の電力を消費するため、十分な電力を保持することがボートにとって極めて重要である。車で1km走行するのにかかる電力量は、船で1km航行するのにかかる電力量の何分の1かだ。Zinのボートのよう(未訳記事)に、最初から電気で走るように設計されていても、物理的な理由からその能力には根本的な限界がある。
レベレ氏は、シンプルであることを魅力にしたいと考えている。「世界で最も普及している船外機は40馬力です」とし、「このタイプのモーターこそがPure Watercraftが作るものだ」と語る。また「『電気自動車の市場は小さいがとりあえず試しに作ってみた』と言うような多くの自動車会社の考え方がそもそもの誤りです」と同氏は指摘する。そうした中でテスラが電気自動車版の素晴らしい車を世に送り出した。
ボートにおいても同じことが言えると同氏は言う。たしかにさまざまな種類のボート、モーター、船体材料といった市場が存在している。しかし、小型ボートに現在動力を供給している既存のモーターの数々のレベルと同等かそれ以上のモーターを同社が提供し、しかもそれが電気であれば、必ず需要は広がりを見せるだろう。
「環境を配慮して購入してくれる顧客だけを頼りにすることはできません。利己的な選択で電気動力の製品を欲しいと思う人々がいてこそ成功し得るのです」とレベレ氏。
いずれにしても、そのメリットを列挙するのは簡単だ。静音で、釣りやクルージングに適しており、どのコンセントでも1、2ドル程度で充電が可能。小型のガスエンジンに比べて部品数が大幅に少なく、メンテナンスが極めて少ない。そしてもちろん、現在一般的な、気が滅入るほど汚れたモーターのように水や空気中に煙や微粒子を吐き出すことはない。
ガソリン使用に残された唯一の実質的な利点は、初期コストと利用範囲だろう。より良い製品に投資する気持ちがあれば、コストはそれほど問題ではない。また、ほとんどのボート利用者がそうであると思うが、1回の出航につき数マイル程度の航行であれば、航続距離も問題にはならない。釣りをしたり、湖の周りをクルージングしたりする程度であれば、1日中動かすことが可能だ。電動製品を買う気なんて毛頭にもないという人でもすぐこの事実に気が付くだろうし、少しでも欲しいと考えていた人々はますます欲しくなったことだろう。
高価格であることの根強い警戒感はまだかなり残っている。通常20~50馬力の船外機の価格は数千ドル(約数十万円)からで、それにガス代がかさむことになる。同社のモーターは充電器システムとバッテリーパックのセットで1万6500ドル(約174万円)、追加のパックは約8000ドル(約84万円)となっている。同社はいくつかのボートメーカーと協働して、ボート一式で3万ドル(約316万円)以下での提供を試みているが、それでも「2~6人乗りボート向けの船外機」利用者層にとってはハイエンドと言えるだろう。
L37と多数の個人投資家(Amazonの幹部やボート業界の関係者も含まれている)が主導する2340万ドルに達したAラウンドの資金調達で、生産のスピンアップを正面から見据えている。これまでテストしてきた「ベータ」製品に変更を加えた後、本社のあるシアトルで1000台を製作する予定だ。同社は基本的に研究開発を終えているので、製品の設計を終えるのに数年間顧客を待たせるようなことはほぼないだろう。またレベレ氏は、今のところ別の製品を作るつもりはないと述べている。
「私たちはこのパワーレベルで同製品を完成させます。そこに全力を注ぎます」と同氏は唱える。同社の焦点は優れたエンジニアリングであり、願わくば利益率の向上を図りたいとしている。同製品は、2021年のボートシーズンに間に合うよう完成されるはずだ。
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カテゴリー:モビリティ
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[原文へ](翻訳:Dragonfly)
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