今日はネット誹謗中傷やいじめが起こる理由についてお話ししていきます
今回、とあるプロレスラーの方が誹謗中傷によって悲しい結果になってしまったこともあり、多くの方がネット誹謗中傷について考え直すことになったのではないかと思います。
そこで、より多くの方がネット誹謗中傷についてのことを知っていただくためにも、少し、心理学的な側面からお話しできたらと思います。
はじめに
ひとつ忘れてはいけないことは、どんな人であれ、誹謗中傷された人は傷つくということです。
もし、これをみて日ごろのうっぷんを、あなたの知らない方に吐いているのであれば、それはどんな理由があっても正当化はできません。
人は傷つく、あなたが何かで傷ついていたように、言われた人も傷つくのです。
これを前提にこれからの話しを聞いていただけるとうれしいです。
今からお話しすることは、誹謗中傷やいじめにおける心理的要因や原理についてお話ししています。
いくつかの心理学を複合的にお話ししているので、難しい話しになるかと思います。
また、これがすべてというわけではなく、一側面の観点からお話ししていますので、誹謗中傷やいじめの起こる心理のすべてを網羅しているわけではありません。
お伝えしきれていない部分は今後またお話ししていく機会もあると思いますので、ご興味のある方はブックマークしておくことをお勧めします。
ネットのコミュニケーションミスについて
現実世界では人と顔を合わせてコミュニケーションをとっています。
お互い顔を合わせてコミュニケーションをとる、
ネットの世界では匿名性が高く、顔も名前も出さずにコミュニケーションをとることができます。
コミュニケーションをとるうえで重要になってくるのは、言語だけではありません。
言語で伝えられるものはコミュニケーション全体のたったの7%でしかありません。
この7%しか使っていない使っていない中で相手の言っていることを読み取る必要性があります。
このときにかかる脳のストレスは通常のコミュニケーションのストレスよりも高いです。
なので、感情の読み取れないものや、受け手の心身の状態から、心理的バイアスがかかり、悪意の感情が生まれてしまうケースもあります。
例えば仕事のメールで、上司が淡々と指示メールを送ってきたものに対して、「なんか上司機嫌悪いのかな」とか「なんか自分ミスってたかな…」などと思ってしまうことはないでしょうか?
こういったケースは、だいたい受け手側の思い込みだったり、とらえ方のずれがあります。
ネットの世界ではこの思い込みやとらえ方の違いが大きなトラブルになることが非常に多いです。
これを解決していくには残りの93%を活用していく必要があります。
なるべくコミュニケーションの上で顔を合わせたりして非言語情報を取り入れていくと、単に上司が忙しくてとりあえず早めに指示出ししておけば、部下も動けるだろうと用件のみ伝えてきたのかもしれません。
言語情報のみで物事を捉えるということは情報がそもそも欠落している状態ですべてを理解しようとする行為です。
7%の情報で100%の理解をしようとすること自体が、そもそものトラブルになります。
私たちは普段からこの7%の情報で何が正しくて、何が悪いのかを判断してしまいがちです。
根本的にコミュニケーションの欠落が現代社会では問題になっていると言えます。
ネットで起こる没個性化という現象
ネットでは匿名性の高く、自分が何者なのかを特定されない状態になります。これは「没個性化」と呼ばれています。
アメリカの心理学者ジンバルドーは「没個性化の時は、抑制力が弱まり、攻撃的になる」と述べています。
彼が行った実験では、口と目が見えるだけのマスクをかぶらせた匿名群と、名前を付けた非匿名群を分けました。
それぞれ個別に特定の女性に対して電気ショックのボタンを押させる実験を行ったところ、名前をつけた非匿名群よりも、匿名群の方が躊躇なくボタンを押すことが実験結果でわかりました。
また、事前に用意した録音テープを聞かせて、好ましい印象を与える女性と自己中心的で不快な印象を与える女性をそれぞれ用意し、匿名群と非匿名群に同じように電気ショックのボタンを押させました。
結果、不快な印象を与える女性に対してボタンを押す率が高かったのです。
一人でいる状態では自分の存在があまりにも大きく目立ちますが、人に埋もれると自分の存在が目立たなくなる没個性化した状態では、あきらかに攻撃性が高まることが分かっています。
また、ジンバルドーはこの実験を通して次のように考察しています。
「セッションを重ねるごとに感情が高ぶって、興奮状態になり、1つ前の行動がさらに大きな行動を引き起こすスパイラル効果が発生したのだ。そして、他者を傷つけたいというサディスティックな願望が引き起こす行動と言うよりも、他者を支配し、制圧しているという充足感が引き起こすものだ」
没個性化が起こる要因と条件
大きく分けて没個性化が起こる要因は次の4つとされています
1.自分の行動への抑制の低下(衝動的行動)
2.身近の手がかりや現在の感情に流されやすくなる
3.合理的思考の低下
4.他者による評価への関心の低下
そして、没個人化が生じる条件とは次の通りです
1.個人が特定されない集団内の匿名性
2.生理的喚起(興奮)の増大
3.外部事象への注意の集中
4.集団の一体感
ネットの世界ではこの要因と条件が非常に陥りがちです。
おかしな集団に染まってしまう心理
人は社会的証明を求めて生きています。社会的証明とは、例えば多くの人がSNSで「いいね」をしていると、自分も「いいね」を押してしまったり、誰かが拍手していると自分もつられて拍手してしまうような、他人の行動や情報によって影響を受けて、まねたり、鵜呑みにしてしまったりすることです。
この社会的証明は特に、ネット社会では非常に多く働いています。
自分のフォローしている人の言葉から影響を受けて、自分も同じような発言を投稿していたりすることはよくあるかと思います。
社会的証明はプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともあります。
SNSではデマや風評などが広がることも非常に多いです。
これは社会的証明がマイナスに働いていることだと言えます。
フランスの社会心理学者 ル・ボンは群衆心理という人間の群集で生まれる心理について研究したひとりです。
ル・ボンは「群衆心理は非常に感情的で簡単に物事を信じやすく、単純な思考で物事を白黒で考え、自分の命をも犠牲にするほどの徳性が備わっている」と述べています。
群衆心理は必ずしも原始的で反知性的であるとは限りませんが、群衆心理が無秩序に働いてしまった場合、多くの危険をはらんでいます。
個人でいるときは温和で丁寧な人でも、群衆心理に染まってしまうと、真逆の行動を行ってしまうこともあります。
その要因としてル・ボンは次の3つをあげています。
1.大勢にいるというだけの一種の不可抗力的力による無意識化
2.精神的感染
3.被暗示性
人は集団にいるというだけで、周りの圧力、熱気というもので自分の意志が弱くなる傾向があります。
人の心理は無意識に働いている部分と意識的に働いている部分があります。
周りの雰囲気にのまれてしまい、意識的に働いている心理が弱まってしまうのです。
この無意識に働く心理的部分が続くと、人は精神的感染を起こしやすくなります。
この状態では理性は失われ、直感的に生存意識が動きます。
この心理状態のときに、強いショックを与えられたり、暗示の強いものを刷り込まれると、あたかもそれがすべてだと思いこんでしまうのです。
ネットに限らず、集団いじめが起こる仕組みもこの群衆心理が強く働いているものと考えられます。
まとめ
今回紹介した心理学は次の3つです
- メラビアンの法則
- 没個性化現象
- 群衆心理
ほかにも考えられる心理的要因もありますが、ネットで起こる誹謗中傷やいじめが起こる心理はこのあたりが大きく影響していると考えられます。
少しでも、心理を通してネットの世界がより良い場所になることを願います。